ペットボトルロケットで科学する—物理編

ロケット

Space Rocket / Dennis Wong

こんにちは。数学を教えている深川です。

4月5日(日)にペットボトルロケットを作って飛ばすイベントを開催します。参加者募集中ですので、興味がある方は是非お問い合わせください。

日時 :4月5日(日) 9:00 ~ 17:00
参加費:1,500円
持ち物:炭酸ペットボトル3つ(形状がシンプルなもの)

ペットボトルロケットを飛ばすのは、単純に迫力があって楽しいです。
びっくりするぐらい飛ぶので感動するかもしれません。

でもそれだけがこのイベントの目的ではありません!

数学・理科を教える僕としては、身近なことを科学的に考えられる力を養ってもらいたいと思っています。
そこで「最も飛距離が出る発射角度は何度か?」ということを高校1年生以上が分かるように解説します。

ただし中学生が学校で教わることだけでは解説しきれないので新しい知識も登場させます。

長い解説なので物理学編と数学編の2つに分けてお届けします。

以下はこの記事の話の流れです。

  • ゴールはロケットがもっとも遠くまで飛ぶ角度を求めること。
  • 距離についての公式「距離 = 速さ × 時間」を確認。
  • 運動を分解。水平向きの運動を考える。
  • 地面に垂直向きの運動を考える。
  • 滞空時間は?
  • 飛距離を2つの速度で表す。
  • 物理編まとめ

丁寧に解説するのでどうか最後までよろしくお願いします。

最も飛距離が出る発射角度は何度か?

ペットボトルロケットは水を噴出しながらとても遠くまで飛びますが、「水が噴出しながら」ということを計算するのはあまりに複雑です。今回は簡単に考えるためにボールが飛ぶ様子と同じように考えたいと思います。

ボールなど、物が飛ぶときに描くカーブのことを放物線といいます。下の▶︎ボタンをクリックすると、赤いボールが飛びます。このカーブが放物線です。

これから飛距離について考えるのですが、とりあえず物体が移動する距離についてみなさんが知っていることはなんでしょうか??

おそらく小学校で勉強するこの公式でしょう。

  距離 = 速さ × 時間

この公式が使える範囲は限られています。これは物体が速度を変えずに一直線に運動(移動)する場合に使える公式です。このタイプの運動のことを、物理学では等速直線運動といいます。

放物線はパッと見では直線には見えません。しかし実は視点を変えると等速直線運動をしているように見えます。どこからみると、そう見えるでしょうか??

運動を分解する

正解は・・・飛んでいる物体を上空からみると等速直線運動をしているように見えるんです。物体の真上から光が当たっている場合、その影の動きが等速直線運動であると考えても同じことです。

そう言われても・・ピンとこないかもしれませんね。

ということで百聞は一見に如かず。先ほどの赤いボールの運動に影をつけてみました。青い円がその影だと思って下さい。青い円は等速直線運動をしています。

青い影は真っ直ぐ一定の速度で動いていることが確認出来ましたか?

つまり飛んでいるボールの運動を2つに分解して考えれば、そのうち一つの青い円は「距離 = 速さ × 時間」が使えます。

先ほどの影は地面と平行な向きに、つまり水平な向きに運動します。もう一つの運動は地面と垂直な向きの運動です。こちらで確認して下さい。

緑の円が地面と垂直な向きの運動です。この運動を物理学では等加速度直線運動といいます。この緑の円が動いている時間が、赤いボールの滞空時間だと言えます。

それでは次に等加速度直線運動を学び、滞空時間を求められるようにしましょう。

加速度・・って何?

等加速度直線運動という言葉は聞きなれないと思いますが、加速度はなんとなく日常でも耳にしたことがあると思います。
ここでは加速度とは何かを説明します。

加速度とは、速度変化の大きさのことをいいます。
例えば車が発進するとき、急発進すれば加速度は大きい、緩やかな発進であれば加速度は小さいということです。

加速度には向きがあります。だからマイナスになることもあります。
車の進行方向をプラスの向きだと決めると、ブレーキを掛けて減速するとき車はマイナスの加速度を持つことになります。

単位はこちらです。この単位の意味も解説します。
tanni
※以下「m/s2」と書きます。

あまり見慣れない単位ですね。m はメートル単位を表し、s は時間の単位である秒(英語では second)を表しています。もし s が2乗されていなければそれは速度の単位です。ということで、速度の単位だけ分けてみます。

  ( m / s ) × 1 / s
 = ( m / s ) ÷ s

この意味を翻訳すると、速度( m / s )を秒( s )で割った値、です。言い換えると、1秒あたりの速度、です。

加速度とは、1秒あたりの速度変化を意味しています。

「〜あたり」という表現を使うのは、例えば人口密度は人数(人)÷ 面積(㎢)と計算しますが、それを1㎢ あたりにいる人数と解釈するのと同じ理由です。

車の場合、加速はエンジンによるものですし、減速はブレーキによるものです。それでは宙に浮いているものが地面に向かって加速しながら落ちてくるのはなぜでしょう?

まるでニュートンのような問いかけですね。物が地面に向かって落ちる理由は重力が働いているからです。物理学では重力による加速の大きさを、重力加速度といいます。

重力が物を地面に引きつける時、その加速する様子はどんな物でも変わりません。そのことを証明するためにガリレオ・ガリレイが有名な実験をしました。(空気抵抗は無視すると、の話です。)

ピサの斜塔から重さの違う二つの金属球を落とす、という実験です。重たいほうが軽いほうよりも加速度が大きいのなら、重たいほうが先に地面に着くはずです。

結果は同時に地面に着きました。この結果は考えて導くこともできるのですが、実験を通じて誰もが納得しました。ガリレオは望遠鏡の仕組みを知ると自分で作ってしまったようで、好奇心が強くとにかく自分で体験してみたいという性格だったのでしょう。ガリレオは晩年に失明していますが、それは太陽の黒点を観察しすぎたためだと言われています。

重力加速度の話に戻りますが、ガリレオの実験からも分かる通りどんな物でも重力加速度は同じです。重力加速度は、約9.8m/s2 です。

それでは等加速度直線運動で使える公式を紹介しましょう。こちらです。

  速度 = 最初の速度 + 加速度 × 時間
  ※速度の単位は全て( m / s )、時間の単位は秒です。

先ほど説明したように加速度が「1秒あたりの速度の変化」を表していることを思い出してもらえると、この式にも納得してもらえると思います。

ただこれだけでは実感が湧かないでしょうから、野球の選手が真上にボールを投げ上げるとして、この公式を使って地面に到着するまでの時間を考えてみたいと思います。緑の円が投げ上げられたボールだと思って下さい。

速度の単位は秒速でなければならないので、選手が投げる球の速さが、時速150kmだとすると

   150 km/h
 = 150 × 1000 m/h
 = 150 × 1000 ÷ 3600 m/s
 = 42 m/s
 ※ h は時間(英語で hour)を表しています。

投げ上げられたボールは当然落ちてきます。落ちて元の位置に戻る時の速さは、向きが違うだけで投げ上げた時と同じ速さで戻ってきます。

ちなみに投げ上げられたボールが最も高い位置に達するまでの時間と、そこから落ちて元の場所に戻ってくるまでの時間は同じです。

投げ上げた時の速度は 42m/s、戻ってくるときの速度は向きが反対なので -42m/s です。そして今回は上向きの速度を正としているので、重力はそれを邪魔する方向に働きます。よって重力加速度は負なので -9.8m/s2 となります。これを先ほど紹介した公式に代入します。時間(秒)を t とすると、

  -42m/s = 42m/s – 9.8m/s2 × t
  t = 9.0(秒)

きれいな数字が出ましたね。つまり 150km/h の球を投げられる選手が真上にボールを投げると、そのボールの滞空時間は9秒であることがわかりました。

これから先の解説では地面に対して垂直向きの最初の速度を、単に「垂直向きの速度」と表現します。また水平向きの最初の速度も単に「水平向きの速度」と表現します。そして垂直向きの速度は上向きを正とします。

これまでのおさらい

話が長いのでここで一旦話の流れを確認しておきたいと思います。

【これまで】
  ゴールはロケットがもっとも遠くまで飛ぶ角度を求めること。
  ↓
  距離についての公式「距離 = 速さ × 時間」を確認。
  ↓
  この公式が使えるのは等速直線運動のときだけ。
  ↓
  そこで運動を分解。
  ↓
  等加速度直線運動を学ぶ。

【これから】
  滞空時間を垂直向きの速度で表す。
  ↓
  飛距離を水平向きの速度と垂直向きの速度で表す。

それでは次に滞空時間について考えましょう。

滞空時間を垂直向きの速度で表す

緑の円まで話を戻します。

もし垂直向きの速度が分かるなら、先ほど紹介した、

  速度 = 最初の速度 + 加速度 × 時間

という式に、

  速度 = -垂直向きの速度、
  最初の速度 = 垂直向きの速度、
  加速度 = 重力加速度 = -9.8m/s2

というこの3つを代入して、

  -垂直向きの速度 = 垂直向きの速度 -9.8 × 時間
  時間 = 2 / 9.8 × 垂直向きの速度

となることがわかります。

これで滞空時間を、ボールが投げ上げられた時の垂直向きの速度で表すことが出来ました。

飛距離を水平向きの速度と垂直向きの速度で表す

赤いボールの、水平向きの運動と垂直向きの運動を一度確認しましょう。

水平向きに移動する青い円の移動時間は、垂直向きに移動する緑の円の滞空時間と同じです。

青い円の移動距離は、

  距離 = 水平向きの速度 × 時間 という計算で求まるので、

ここに 時間 = 2 / 9.8 × 垂直向きの速度 を代入すると、

  距離 = 2 / 9.8 × 水平向きの速度 × 垂直向きの速度

という式が求まりました。
つまり飛距離は水平向きの速度と垂直向きの速度の積で決まるということです。

物理編まとめ

宙を飛ぶ物体の運動はそのままでは考えることが難しいですが、運動を水平方向と垂直方向に分けることによってそれぞれの運動について考えを進めることが出来ます。

水平方向の運動は等速直線運動であり、昔ながらの「距離 = 速さ × 時間」の公式が使えます。

垂直方向の運動は等加速度直線運動であり、新しく「速度 = 最初の速度 + 加速度 × 時間」という公式を紹介しました。この公式によって垂直方向の最初の速度が分かるなら、時間(滞空時間)が求まります。

これらのことからペットボトルロケットの最初の速度が一定だとすると、飛距離は水平向きの速度と垂直向きの速度の積で決まることが導かれました。
そして水平向きの速度と垂直向きの速度は発射角度によって決まるのですが、ここから先は数学的な頭を使って考えていくことになるので物理編はここまでとします。

長い解説にお付き合い頂きありがとうございました。続く数学編もよろしくお願いします。

数学編はこちら

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