ペットボトルロケットの数学【飛距離を計算する】

ロケット

こんにちは。数学を教えている深川です。

4月5日(日)にペットボトルロケットを作って飛ばすイベントを開催します。

参加者募集中ですので、興味がある方は是非お問い合わせください。
※イベントは終了しています。

  • 日 時:4月5日(日) 9:00 ~ 17:00
  • 参加費:1,500円
  • 持ち物:炭酸ペットボトル3つ(形状がシンプルなもの)

前回はペットボトルロケットの物理 【発射角度と飛距離 】という記事を、高校1年生以上に理解してもらえるよう書きました。今回はそのおさらいをしつつ飛距離を計算する方法を紹介します。

前回の(物理編)のおさらい

ペットボトルロケットの物理 【発射角度と飛距離 】

「最も飛距離が出る発射角度は何度か?」というゴールに向けて、もしも発射した時の速度が一定であればその速度を水平方向と地面に垂直方向に分けて、その2つの速度の積で飛距離が決まるというところまで解説しました。

今回はその後編にあたる数学編です。

運動を2つに分けて考える

ペットボトルロケットが放物線を描いて飛ぶと考えて、そのままでは考えを進められないので、その運動を2つに分けて考えることにしました。

赤がペットボトルロケットの運動、青が水平方向の運動、緑が地面に対し垂直方向の運動を表しています。

緑が地面から飛び出してからまた地面に戻るまでの時間を求めるために、こちらの公式を紹介しました。

  速度 = 最初の速度 + 加速度 × 時間
  ※速度の単位は全て( m / s )、時間の単位は秒です。

この公式に緑の運動について当てはめると、上向きの速度を正として、

  時間 = 2 / 9.8 × 垂直向きの速度 となります。

青は、おなじみの「距離 = 速さ × 時間」が使えます。これに上の式を代入すると、

  距離 = 水平向きの速度 × 2 / 9.8 × 垂直向きの速度
     = 2 / 9.8 × 垂直向きの速度 × 水平向きの速度

という式が求まりました。ここからが数学編の始まりです。

垂直向きの速度と水平向きの速度の関係

「垂直向きの速度 × 水平向きの速度」が大きければ大きいほど、飛距離は伸びるということになりますが、好き勝手に大きくできるわけではありません。発射した瞬間の速度から分解して出てきた速度なので、それぞれの速度は発射速度よりは小さいはずです。

発射した瞬間の速度をv、x、y の3つに分解
発射した瞬間の速度を分解したv、x、y で直角三角形をつくる

そして実は「垂直向きの速度と水平向きの速度は発射速度より小さい」という以上にこの3つの大きさには関係があります。
ここで一度数学らしく、水平向きの速度を x、垂直向きの速度を y 、そして分解前の発射速度を v として、それぞれの大きさを矢印で表した図にしたいと思います。

この図で気がついてもらいたいことは、v、x、y の3つで直角三角形が出来るということです。

直角三角形が出来るということは三平方の定理が成り立ちます。

  x^2 + y^2 = v^2

また、v の値は一定なので、発射地点を固定して矢印の先は円を描きます。
実は三平方の定理の式をそのままグラフの式であると考えた場合に、円の方程式になっています。下の図の中でマウスポインタをグルグル移動させてみてください。


v の大きさを100としています。

これで x、y、v の関係を整理出来ました。この図を動かして観察すればなんとなく x と y の積の最大値が分かるのですが、それは脇に置いておいて考えを進めます。

xy の最大値と円との関係を考える

それでは先ほどの式から xy を作りたいので変形します。

xyの式変形

  x^2 + y^2 = v^2
  ( x + y )^2 -2xy = v^2
  

この式の中で v^2 、つまり発射速度の2乗は一定であると考えます。そうなると x + y が最大である時に、xy も最大になります。

ここで x + y = k とおいて、y = -x + k と式変形しました。k の値を自由に動かせるのが下の図です。

x と y は「x^2 + y^2 = v^2」の方程式を満たす、つまり円周上の点だと言えます。
だから「y = -x + k」の式と「x^2 + y^2 = v^2」との交点を分かりやすくしてみます。

こうしてみると、k が最大になるのは円と接している時だということが分かると思います。

円と直線が接するということは・・・

もうほぼ答えですが、下の図が円と直線が接している図です。

円と直線が接している図

図の中に書いてありますが、傾きが 1 や —1 の直線と x軸との交わる角度は45°です。円と接するということは「y = -x + k 」の直線と、接点から円の中心に向かって引いた直線は垂直に交わるということです。

よって図の△OABにおいて、

  ∠OAB = 90°
  ∠ABO = 45°

であることから、

飛距離を最大にする発射角度は45°であるということが分かりました。

数学編のまとめ

物理編では、式と物理的なイメージとの関係が把握しやすかったと思います。今回の数学編は、式と物理的なイメージとの関係が把握しやすいのは、円の式と発射速度の分解までだったと思います。

「 xy = 〜 」となる式を作るために円の方程式を変形したり、「 x + y = k 」という直線を考えるあたりで、物理的なイメージからどんどん離れて数学の世界に入りました。イメージが難しいことを論理的に扱うための手段が数学だと言えます。

高校の勉強では今回解説した内容を物理の「斜方投射」という単元で勉強します。高校の数学で勉強する三角比を使いながら答えを導くので今回のように円の方程式を考えたり、その円と接する直線を考えるということを意識しません。三角比を使うとあっさり解くことが出来ますが、実際は三角比の仕組みが代わりに考えてくれているようなものなのです。

高校で物理を勉強する生徒さんは今回の解き方と学校の解き方を比べて、数学が与えてくれる道具のパワーを実感して下さい。

ロケットを宇宙へ飛ばす大人もスマホを設計した大人も面白いゲームを作る大人もみんな学生時代がありました。そういう期待感や夢を持って勉強できると楽しくなると思います。

以上解説でした。最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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私たちにとってもカリキュラムは大切なものですが、勉強を通じて生徒自身が「どう勉強したいか」考えて行動できるようになることが、勉強を楽しむことに繋がり、長期的な学力の向上に貢献すると考えています。

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この記事を書いた人

深川 道陽

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