短期記憶と長期記憶のしくみ
1968年、心理学者のアトキンソンとシフリンは人の記憶を①短期記憶と②長期記憶という2つに分けられるという二重(多重)貯蔵モデルを提唱しました。(のちに感覚記憶という概念も加えられるのですがここでは割愛します)
この記事では、短期記憶と長期記憶について紹介していきます。
1. 短期記憶
短期記憶とは数秒から1分程度の間保持される短い記憶のことです。
人は目や耳や鼻などの感覚器官から大量の情報を受け取っています。それらの情報のうち、注意を払っている情報だけが短期記憶へと保存されます。
短期記憶は非常に短い間しか保存されません。
授業中に習った内容を、授業後に思い出そうとしてもほとんどは忘れてしまっていたという経験は誰しもあるのではないでしょうか。
1-1. 一度に覚えられるのはいくつ?
短期記憶で一度に覚えられる数は限界があります。
心理学者のジョージ・ミラーは1956年に「人が一度に覚えられる数を7つ前後(5~9)」と提示しています。(有名な説で「マジカルナンバー7」と呼ばれていますが、この説は研究に基づいたものではなく、ミラーが講演で述べた言葉に過ぎないということがわかっています。)
最近の研究では一度に覚えられる数はもっと少ないという説があり、ネルソン・コーワンなどの研究では4つだといわれています。
1-2. チャンク(まとまり)をつくると覚えやすい
同じ情報でも人によっていくつの情報と数えるかは変わってきます。
例として「Danke」という文字列について考えてみましょう。
アルファベットに注目すれば「D,a,n,k,e」という5つの情報だといえます。
もし、ローマ字を知っている人であれば「Da,n,ke」の3つの情報だともいえるでしょう。
また、ドイツ語を知っている人であれば「Danke」というひとつの単語(ありがとうの意)とみることができるのです。
このように短期記憶はひとまとまりの情報として保存されます。
この情報のまとまりのことをチャンクといいます。
チャンクを活用することで短期記憶の容量を節約することができます。
2. 長期記憶
数秒から1分程度の間だけ保持する短期記憶に対し、半永久的に保持する記憶のことを長期記憶といいます。
一般的な意味での「覚えた」ということですね。
2-1. 長期記憶の仕組み
脳の中には情報を保持するニューロン(神経細胞)が100億個もあり、その結合パターンとして記憶が保持されます。
ニューロンは単語、文章、数字など覚えようとする対象に触れるたびに「発火」し、隣りあった2つのニューロン間の結合が強化されます。を繰り返すことで、脳に覚えようとしていることを思い出す回路が作られます。
2-2. 反復(リハーサル)すると覚えやすい
短期記憶された情報は何もしなければすぐに失われてしまいますが、反復すること(リハーサルといいます)で保持期間を伸ばしたり、長期記憶に保存することが可能です。
2-3. 枠組み(スキーマ)を作り、結びつける
新しい情報を既に知っている情報と結びつけることができれば、長期記憶にしやすくなります。そのためにスキーマを活用しましょう。
スキーマとは「記憶に貯蔵された一般的な概念を表現するデータ構造」のことです。
どういうことでしょう。
例えば私たちは以下のような写真を見たときにそれが「頭」だと認識することができます。
それは目、口、鼻、耳、髪などがこのように配置されたものが「顔」だというスキーマを持っているからです。
また、以下の画像のようなものを見たときに、数Aの学習がある程度できている人であれば、これは「方べきの定理」の問題と認識することができます。
このように、人はスキーマを用いて情報を長期記憶に保存したり、取り出したりしています。
新しい情報は、他の情報と結び付けることで長期記憶に保存することができます。新しい情報を位置付けられるスキーマを持っていると、新しい情報を他の情報と結び付けやすくなるので長期記憶を容易にするのです。
4. まとめ
- 短期記憶は数秒から1分程度の間しか保持されない
- 一度に覚えられる短期記憶は4つくらい
- まとまりを作ると短期記憶しやすい
- 繰り返すことで短期記憶を長期記憶に移行できる
- 情報をスキーマに位置付けると長期記憶しやすくなる
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