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文理選択の決め方について。将来の夢は必要か?親の役割は?

文理選択は多くの高校で1年生の間に行われます。1学期に希望調査がはじまり、担任の先生の面談を経て2学期以降に2年生の選択科目が確定するのが一般的です。

この記事では、文理選択を控えている高校生やその保護者に向けて、文理選択の仕方や気をつけるべきことについて書いていきます。

文理選択の影響

文理選択とは高校2・3年生で授業を受ける科目を文系中心にするか理系中心にするか選択することです。

この選択は、大学受験における受験科目を選択することとほとんど同じで、進学する大学の学部学科やその後のキャリアに大きく影響します。

つまり、文理選択をすることは将来の方向性を大まかに決めることを意味しているのです。

文理選択の3つの判断軸

文理選択にあたっては、以下の3つの軸で考えるのが一般的です。

  1. 科目の得意不得意と好き嫌い
  2. 大学で学びたい学問分野
  3. 将来のビジョン

身近な順番に挙げましたが、どの順番から考えても問題ありません。

1.科目の得意不得意と好き嫌い

まずは、一番身近な科目の得意不得意から考えます。

よく「安易に科目の得意不得意だけで文理選択をしない方が良い」と聞きます。確かにその通りですが「それだけで安易に選択する」を避けるべきというだけで、得意不得意や好き嫌いを文理選択の主要な判断基準にすることは問題ありません。

高校2・3年生で選択した科目にはそれなりに多大な時間と労力を注ぐことになります。もし興味のもてない科目を選択してしまうと、学習内容は味気なく感じ、習得の効率も悪くなってしまうおそれがあるでしょう。

特に、理科・社会の選択科目は少しでも面白いと感じられる科目を選ぶのがおすすめです。

志望学部と苦手科目のどちらが重要か

希望する学部に進学するために、苦手な科目を選択しなければならないときは、基本的に進学したい学部を優先するのがおすすめです。

例えば「理系学部に進みたいけど数学が苦手」という場合は(もちろん希望する学部学科や苦手の度合いにもよりますが)数学を選択することをおすすめします。

なぜなら、高校数学が苦手でも、大学の勉強・研究が苦手だとは限らないからです。大学受験程度の数学は、たとえ苦手であっても適切に努力すればカバーできます。

以前、高1の時点で農もしくは薬学部を志望しているが、数学がとても苦手という生徒がいました。悩んだ結果その生徒は理系を選択し農学部に進学、大学院を経て理系の専門知識を活かした技術職に就いています。大学や就職後に、数学が苦手であることが不利になることはありませんでした。

2.大学で学びたい学問分野

大学で学びたい学問分野も重要です。

wikipediaの学問の一覧マナビジョンの学問検索に数多くの学問分野が紹介されています。まずはざっと目を通してみて、興味をもった分野について調べてみましょう。

とはいえ、たくさんの分野の中から自分にとって興味や適性がある学問を探すのは簡単ではないと思います。迷ったときはできるだけシンプルに。以下の2つの質問に答えてみてください。

質問1:あなたは「人間や社会」と「自然やシステム」のどちらが面白いと思いますか?

質問2:あなたは「人の活動に直接関係する(応用)」と「その基盤になる(基礎)」のどちらが自分に合っていると思いますか?

質問1が「人間や社会」で質問2が「人の活動に直接関係する(応用)」
→経済学・法学・社会学など

質問1が「人間や社会」で質問2が「その基盤になる(基礎)」
→哲学・歴史学・文化人類学など

質問1が「自然やシステム」で質問2が「人の活動に直接関係する(応用)」
→医学・工学・農学など

質問1が「自然やシステム」で質問2が「その基盤になる(基礎)」
→理学(生物学・天文学・地質学など)

2つの質問に答えによって、まずは上記の分野から調べて拡げていくとよいでしょう。

講義を体験したり本を読んだりする

大学で学ぶことを体験してみることも判断の役に立ちます。

身近に大学がある場合は、オープンキャンパス等に参加して、講義を体験したりキャンパスの雰囲気を実際に感じてみましょう。

また、以下のような大学の講義をもとにした書籍を読んでみるのもおすすめです。

3.将来のキャリアやビジョン

最後に、将来のキャリアやビジョンついても考えてみましょう。

まずは、世の中にどのような職業があるか知るために、マナビジョン職業紹介『13歳のハローワーク』などを見てみると良いでしょう。とはいっても、これを見て将来の夢を決めましょうというわけではありません。あくまで文理選択や将来のビジョンを考える上でのヒントになればということです。

就きたい職業によっては、大学で専門的な教育を受けることが必須な場合があります。

例えば、医師・看護師なら医学部、薬剤師であれば薬学部、建築士であれば理工もしくは建築系学部に入り専門課程で学ぶことが資格取得に必要です。一方で、弁護士・会計士・教員のように、他の学部出身でも取ることができる資格もあります。

就職する場合、一般的にメーカーの技術職や研究職になるには理系の大学・大学院を出ている必要があります。一方で、営業・企画・人事・総務・経理などの事務系総合職の仕事につく場合は文系理系を問わず就職することが可能です。

必ずしも「将来の夢」を見つける必要はない

私がこれまで塾で生徒と接した経験上、半数以上の高校生は将来のビジョンなんてない!と言いたくなると思います。それは普通のことで、私を含めた多くの大人も、学生時代から明確に将来のビジョンがあって現在に至っているわけではありません。

まわりの空気に合わせて「将来の夢」を見つけなければならないと考える必要はありません。それよりも、日常生活の中で自分と社会の接点をつくり、面白いと感じるものを増やすことの方が重要です。

気をつけておくべきこと

文理選択において失敗しないために、以下に留意しておきましょう。

最低限の情報を自分で調べておく

文理選択や志望校決定に関連する情報が溢れている現在、情報は集めれば集めるほど良いというわけではないと思います。それでも最低限、後悔しない選択のために「自分が選択しようとしている科目で、どんな大学の学部学科に進学可能かの確認」だけは必ずしておきましょう。

文転や理転は可能か

文転・理転はどちらも可能ですが、学校の授業なしで受験レベルまで学力をつけなくてはならないためいずれも簡単ではありません。一般的には文転の方が理転と比べ難易度が低いと言われていますが「あとで文転できるからとりあえず理系」という安易な選択はおすすめできません。

一方で、熟慮の末に理系を選んだけれども、その後文系学部に進学したくなった(またはその逆)ということもあると思います。現状や志望校と残り期間について十分調べた上で、前向きに文転(あるいは理転)を検討してみてください。

文転や理転を検討するということは、その人の知識や興味関心に何かしらの変化があったということですから、それ自体が良いことだと思います。最終的にどちらを選ぶにしても何も後悔する必要はありません。

文理選択における親の役割

文理選択にあたって親がすべきことはあるでしょうか。

前提として、家が子どもにとって精神的にも身体的にも安らげる場所で、困ったときは保護者に頼れる状態であれば、それだけで子どもの文理選択に関する役割を十分に果たしているといえるでしょう。

高校生になると子どもが親にアドバイスを求めることは少なくなり、親の預かり知らぬところで自分の将来について考えているはずです。それこそが、子どもが順調に自立に向かって歩んでいる証拠です。

親の考えを子どもに伝えるべきか

子どもが選択に悩み、大人のアドバイスを必要としていることもあるでしょう。

子どもは、親が思っている以上によく考えている一方で、驚くほど何も知らないという両方の面を持っています。ですから、子どもの考えはしっとかり受け止める必要がありますが、必ずしも追認すべきものではありません。たとえ子どもの考えを否定することになるとしても、大人としての考えを率直に伝えた方が良い場合があります。

弊塾に通う保護者の方に話を伺うと「進路や文理選択について子どもの希望をできるだけ叶えてあげたい。」という方が多いように感じます。このような態度は「就職が安定するから理系」「女の子だから文系」のような毒親的押し付けと比較して歓迎すべきことですし、基本姿勢はこうあるべきだと思います。

だからといって、大人が自分の考えを持っていけないわけではありません。むしろ大人は自分の考えを子どもに伝えるべきです。子どもは、自分の考えと他人の考えに整合性をつける過程で、自分の欲望(=〜したい、〜でありたい)を知り、社会の中で自分をどう位置付けるかを学んでいくからです。

先回りして否定しない

ときどき保護者の方が「あなたのしたいことをするには、〇〇する必要があるけどあなたやる?どうせできないでしょうけど」のように先回りして否定してしまう場面を目にします。子どものことをよく知っているゆえにこのような発言をしてしまうのでしょう。

しかし、子どもにとって最も信頼されるはずの親に否定される影響を甘く見てはいけません。このような否定をされ続けると、子どもの自己評価は下がる一方で、未来にそれをできようになるかもしれない可能性を潰してしまいます。

親も自分の人生を生きる

親が子どもの将来に漠然とした不安を抱えたり、子どもの発言と行動のギャップに苛立ちを感じるのは当たり前のことです。

そして、親がそうした感情を抱えれば抱えるほど、子どもは親を安心させようとしたり、自分の欲望と向き合えなくなったりして、必要以上に将来不安を埋めるような選択をすることになります。

文理選択に限りませんが、親の役割は子どもが自分の人生を生きるために必要な欲望を形成できるようにすることです。

そのためには親自身がもっと自分の人生を生きる必要があるでしょう。子どもの将来の何を心配しているのか、自身に対して明らかにして、自分で解決できるものはする。根拠のない不安を捨てて、親は親で自分の人生を楽しむ姿を子どもに見せる。

おわりに

文理選択に絶対的な正解はありません。というのも、10代〜20代は様々なものに影響を受け、自己を形作っていく時期であり、たとえその時は疑いのない決断に思えたとしても、その後の数年間で大いに変わっていく可能性に満ちているからです。

重要なのは、日々の生活の中で自分の欲望を見つけ、それらを社会の中でどう関連付けていくかを探ることです。

文理選択は将来の自分の興味・関心の拡がり方の大枠を決める選択です。ぜひ、自身の可能性を拡げる選択をしてもらいたいと思います。

私たちは、横浜にある小さな個別指導の学習塾です。

受験をはじめとした勉強において、固定的なカリキュラムや決まった勉強方法に生徒を適応させることに意識が向きがちです。

私たちはそれらを大切にすると同時に「生徒」を中心とした学習方法を提案し実践することが、生徒が勉強を楽しむことに繋がり、学力の向上につながると考えています。

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この記事を書いた人

坂本 諒

ティーシャル代表。1988年福岡生まれ。大学に進学した2006年から塾講師をはじめ、2013年に個別指導塾ティーシャルを横浜に開校。おもに数学・物理・化学などを担当。

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