中高一貫生の中だるみの原因と対策
中高一貫校に通っているお子さんが「中だるみ」していて全然勉強しない。このような心配を抱える保護者は少なくありません。
この記事では中高一貫生特有の「中だるみ」について、その原因や対策について書いていきます。主張を一言でまとめると「中だるみは親子が自立することで解決に向かう」になります。
中学受験を検討している人も参考にしてみてください。
1.「中だるみ」の状態
中高一貫生における「中だるみ」とは大まかに、中学2年生から高校1年生にかけて勉強への意欲が低下している状態を指して使われる言葉です。
特にお子さんが中学3年生の場合は、公立中学の同級生が高校受験に向かう時期のため「同年代の子が熱心に勉強しているのにうちの子は全然勉強しないし意欲も感じられない。大丈夫なのだろうか。」と不安を感じる方が多いです。
では、具体的にどのような状態が「中だるみ」なのでしょうか。私が塾で生徒を見る限りでは以下の通りです。
- 定期テストの時期に全くあるいはほとんど勉強しない
- 学校の授業中に別のことをしたり寝たりしている
- 余計なことに時間を費やしている
それぞれ具体的に見ていきましょう。
1-1. 定期テストの時期に全くあるいはほとんど勉強しない
入学当初は、生活環境の変化や初めての定期テストに対する緊張感がありますが、入学して半年も経てば学校生活や定期テストに慣れ、緊張が緩んで勉強量が減ります。
場合によっては、定期テスト前なのに全く勉強しないことも。
お子さんがテスト前に家で勉強せずダラダラしていることに対して「テスト直前なのに勉強せずに平気な顔をしているのが信じられない」や「見ているこっちがイライラしてくる」といった保護者の声をしばしば耳にします。
1-2. 学校の授業中に別のことをしたり寝たりしている
学校の授業に対するモチベーションがない状態が続き、授業中に別のことをしたり、寝たりしてしまうこともよく起こります。
私の経験上、高校生の生徒に「学校の授業で眠たくなることはある?」と聞くと100%「ある」という答えが返ってきます。私自身もそうですが、これを読んでいる多くの大人の方は身に覚えがあるのではないでしょうか。
1-3. 余計なことに時間を費やしている
高校受験がない私立中高一貫生は、学校の勉強とは無関係な活動に時間を使うことも多いでしょう。それが保護者からみて「中だるみ」と感じられることがあります。
部活やスポーツ、芸術活動などに打ち込んでいるときはそうでなくても、友だちとの通話やLINE、SNSやゲームなどに時間を費やしているときはとりわけ「たるんでいる」と感じる保護者の方が多いでしょう。
*
実際のケースではこれらの「中だるみ」が複合しています。
共通しているのは、親から見て子どもが勉強するべき時期に勉強していないということ。それに対する親としての不安が「中だるみ」という言葉に表れているように思います。
2. 中だるみの原因
では、中だるみの原因は何でしょうか。私たちは以下の4つが複合していると考えています。
- 勉強する直接的なメリットが感じられない
- 勉強のスキルが不足している
- 悩みや心配事を抱えている
- 保護者の理想と子どもの行動がずれていることによるストレス
それぞれを詳しく見ていきます。
2-1. 勉強する直接的なメリットが感じられない
「中だるみ」の典型的な原因は、中高一貫の中学2年〜高校1年生にとって、勉強する直接的なメリットが感じられないことでしょう。
多くの中高生が勉強するのは、意識的であれ無意識的であれ、勉強に対してメリットや必要性を感じるからです。内容は人によって様々ですが、志望校に合格したい、志望校進学のために必要な評定をとりたい・負けたくないクラスメイトがいる・平均点くらい取っておかないと恥ずかしい・赤点や留年を回避したい・数学が楽しくてしょうがないなどがあげられます。
中高一貫生は高校受験がない分、このような動機を生む機会が少ないといえるでしょう。
2-2. 勉強のスキルが不足している
定期試験前に勉強しなかったり学校の授業で寝てしまったりするのは、勉強のスキルが学習内容に対して不足していることが原因かもしれません。
中高一貫校は学習進度が早く、定期テストの度に求められる自主学習は量・質ともに高い水準です。中学受験を通じて多少は勉強の勘所を掴んでいるかもしれませんが、中学高校レベルで通用する勉強のやり方を身につけている生徒は少数派でしょう。
勉強のスキルが足りないと、授業で理解したことをすぐに忘れてしまい、定着に必要な練習も不十分になってしまいます。すると、ますます授業がわからなくなり、学校からの課題は終わる見通しが立たず、定期試験対策を十分にとれず、成績が落ち、それが続くと勉強に対して諦めの気持ちを持ってしまうこともあります。
2-3. 悩みや心配事を抱えている
悩みや心配事を抱えているときは、それに意識が向き、全般のパフォーマンスが落ちてしまいます。
例えば、学校生活の中で友人と喧嘩してしまったとか、何かミスをしたり悪いことをしてしまったとか、将来への漠然な不安など、傍から見ると何でもないことが、勉強に身が入らなくなる原因になることもあります。
2-4. 保護者の理想と子どもの行動がずれていることによるストレス
4つ目は上の3つと少し異なる視点に立つものです。
保護者が目にするお子さんの行動と、保護者の「こうあってほしい」というイメージのずれこそが「中だるみ」が問題視される原因だという見方です。
もちろん、保護者がお子さんに対して「こうあってほしい」という理想の姿を持つこと自体は当然で何の問題もありません。
とはいえ、ここまで見てきたように多くの子どもにとって「中だるみ」状態になることもまた普通のことです。
であれば保護者とお子さん間のズレは必然的に生じてしまうことになります。それを「中だるみ」と問題視することは果たして良い結果を生むのでしょうか。
3. 保護者ができる「中だるみ」対策はあるか
では「中だるみ」を感じたときに何ができるでしょうか。
「目標を決める」「学習環境を変える」「勉強のやり方を工夫する」なども大切なことですが、ここでは原因2-4.としてあげた「保護者の理想と子どもの行動がずれていることによるストレス」を緩和することに注目します。
3-1. 「中だるみ」のイメージを変える
まずは「中だるみ」という言葉のイメージを変えましょう。中だるみという言葉にはいかにも「子どもの心がたるんでいる」という印象があります。しかし、実際の「中だるみ」には様々なケースや要因があります。それらをひとくくりに「中だるみ」と呼ぶことは対処を難しくします。
「中だるみ」は自然現象のように当たり前に起こることで、それ自体問題ではありません。それどころか、むしろ中だるみを可能にするためにこそ、中学受験をしたという側面があるはずです。
3-2. 保護者の希望を整理し伝える
次に、保護者自身が子どもに抱く「こうあってほしい」という気持ちを整理してみてください。「親というのはこうあるべきだ」のようなものを一旦捨て去り、できるだけ素直な気持ちで吐き出してみましょう。
その中に、保護者として譲れないことがいくつか出てくると思います。それらを、タイミングを見計らって子どもに直接伝えてしまいましょう。
子どもは親の期待に応えながら成長していきますが、どこかで子どもの欲望と親の欲望が合わないことを感じ始めます。「中だるみ」状態の中高生であれば既にそうなっているでしょう。だけど、親の期待に応えたいという気持ちもまた持っている。
そんな子どもにとって、改めて親の期待を知ることは、自分の欲望と親の欲望を切り分け、自立するための第一歩になります。初めは上手にできないかもしれませんが、このような機会を自立(自己と他人の分離)の練習と捉えると良いでしょう。
これは同時に親にとって子離れの練習でもあります。親子は別の人間で、子どもが親の望むようにはならないということに慣れていく。そうすることで保護者自身のストレスを減らすことができるだけでなく、子どもの自立を促すことにもなるのです。
3-3. 子どもの行動の変化を支援する
子どもの行動はそう簡単に変わるものではありませんが、保護者の期待を直に知ることによって、反発にしても同調にしても、何かしら子どもの欲望や行動に変化が生じます。
そうやって変化が生じたら、やっと保護者からの具体的な支援が効果的になります。支援内容は、移動・食事・金銭面でのサポートから、相談相手や直接的な勉強のサポートまで、親子の関係性によって様々なものがありうるでしょう。
4. 塾ができる支援
私たちは上記のような子どもの意識や行動変化を促すプロセスを「欲望形成支援」と呼んでいます。
日々の授業を通じて生徒の状態を深く理解すること、生徒保護者との面談等の機会を通じて、生徒が自立した人間として考えていることを発言できること、欲望が生まれやすくなる場をつくることを実践しています。
当然ながら、学習塾として以下のような勉強の支援にも力を入れています。
- 学習目標を立てる
- 適切な教材を決める
- 学習内容を解説し理解してもらう
- 復習のやり方を教え、実行を支援する
- 自習のやり方を教え、実行を支援する
しかし、まずは子どもが勉強に対して持っている意欲を引き出すことが重要です。根本的な意欲を欠いた状態で、表面上の学習目標を決めることは空虚であり、場合によっては悪影響にすらなり得るでしょう。
私たちは、横浜にある小さな個別指導の学習塾です。
受験をはじめとした勉強において、固定的なカリキュラムや決まった勉強方法に生徒を適応させることに意識が向きがちです。
私たちはそれらを大切にすると同時に「生徒」を中心とした学習方法を提案し実践することが、生徒が勉強を楽しむことに繋がり、学力の向上につながると考えています。
「自分に合ったやり方で勉強したい」「どうせやるなら勉強を好きになってもらいたい」という方は是非ティーシャルをご検討ください。