中高一貫校生に塾は必要?通うならいつから?効果的なケースも紹介

中学受験をするメリットとして、入学できれば中学、場合によっては大学受験終了まで、塾に通わなくてよくなる、という点を挙げる方は多いかと思います。
私立中高一貫校は独自の授業カリキュラムがあり、補習などの授業外学習サポートなども手厚いため、塾に通う必要がないとしばしば言われます。
しかし、入試の成績が合格ギリギリだった場合や、中学入試を集団塾の指導で乗り切ったが、これからは自ら勉強する習慣を身につけていかなくてはならないと考える場合など、私立中学入学後も学習塾の利用を検討する場合というのは一定の数存在しているようです。
文科省が令和3年度を対象に実施した調査では、私立中学生の半数以上が学習塾に通っているという結果も出ています。
では、具体的にどのような場合に塾が必要となるのでしょうか? この記事では、これまで多くの中高一貫生の授業を行ってきた経験から、塾が必要となるケースや塾通いのメリット・デメリット、塾選びのポイントなどを紹介します。
1.塾が必要なケース
以下の場合は塾のサポートを受けることが効果的かもしれません。
- 定期テストの得点が継続的に低い
- 定期テストの成績は良いが実力テストは悪い
- 勉強するべきだと感じているものの時間の確保ができず結局勉強しない
1-1.定期テストの得点が継続的に低い
定期テストの得点が継続して低い場合は塾に通うことを検討する必要があるかもしれません。
例えば、3回連続で平均より低い場合は注意が必要です。この状態は学校の授業を理解できていない可能性が高いためです。
中高生の活動の中で多くを占める学校の授業がほとんど意味がないものになってしまい、膨大な時間を無駄にする上に、勉強に対する意欲減退など二次的な悪影響が起こる恐れもあります。
できるだけ早く解決すべきです。
1-2.定期テストの成績は良いが実力テストは悪い
定期テストではそれなりの結果が出るが、実力テストになると結果が出ない場合も注意が必要です。
学習内容の根本的な理解が不足しており、新しく習った内容が定着しにくくなっている状態だと思われます。このタイプの生徒は定期試験前になるとそれなりに勉強し、テストの結果は悪くないことが多いのですが、そのために却って問題が顕在化しにくいという落とし穴があります。中3までは良い成績だったのに、高1になって急に成績が低下するという場合もあります。
比較的真面目なタイプの生徒の英語・数学で起こりやすいです。
生徒本人は自分の学力がどれくらいかわかっているため、そのまま学年が上がると自信が育たず、理系(数学が苦手な場合)や一般受験を選択しづらくなります。理系や一般受験の選択肢を残しておくために、基礎が十分に身についているか一度確認しておくとよいでしょう。
1-3.勉強するべきだと感じているが、時間の確保ができず結局勉強しない
お子さん自身は勉強する必要性を(程度の差はあれど)感じているが、部活や趣味などやりたいことがある中で勉強時間の確保がうまくできず、思った通りに勉強できない場合も塾に通った方が良いかもしれません。
将来を見据え、今自分がするべきことを考え、生活を省みて、時間を確保し勉強を実行することは、中高生にとってとても難しいです。(大人であってもとても難しいと思います)
そんなとき保護者が相談相手になって解決できることもあるでしょう。しかし、思春期の子どもと上手にコミュニケーションをとって導くことは中々難しいことです。以下のように、建設的な話ができなかったり、喧嘩になったりしてしまいがちです。
- 子どもは勉強しているというが親から見ると全くしていないように見える
- 成績や進路についての子どもの話に真剣味を感じられない
- 成績や進路について子どもが話をしたがらない
とはいえ、塾で生徒と接していて思うのは、子どもは決して進路について無関心だったり不真面目に考えているわけではないということです。
子どもの話に耳を傾け、考えを深化し、決断を促すような第三者の存在が、子どもの進路決定や勉強を実行する上でプラスに働く可能性があると思います。二次的な影響として、親子間のコミュニケーションもスムーズになるかもしれません。
2.塾に通う4つのメリット
中高一貫校生が塾に通うメリットとして以下の4つが挙げられます。
- 学校でフォローできない勉強ができる
- 学力と目標に合った勉強ができる
- 勉強をする習慣をつけやすくなる
- 学習方法や進路について新たな視点を得られることがある
2-1.学校でフォローできない勉強ができる
中高一貫校は先取りカリキュラムを実施していることが多いです。進むスピードは学校によって異なりますが、中学3年間の内容を2年〜2年半で終えて、高校の内容に入ることが多いです。進む順番も公立中学とは異なります。
塾に通うと学校ではフォローしきれない学習内容を補ってもらえます。特に個別に対応してもらえる塾に通えば、学校の進度や定期テストに合わせて学習内容を組んでもらい対策することが可能です。
2-2.学力に合わせた学習指導を受けられる
お子さんの学習課題は、今学校で学習している内容かもしれないし、数年前に習ったことかもしれません。場合によっては小学校の内容から復習が必要なこともあるでしょう。
塾に通えば、先生が生徒の学習状況を分析し、どこで躓いているか、どこを復習すべきかを教えてもらい適切な対策をとってもらえます。
2-3.勉強をする習慣をつけやすくなる
前述のように、保護者からすると全くやる気がなさそうに見える生徒でも、実は心の中では「勉強しなきゃ」と思っているケースは多いです。しかし、現実にはスマホやテレビをはじめとした様々な環境要因で理想通りに勉強できないことがほとんどです。子どもは理想と現実のギャップに嫌気がさしてますます勉強する意欲を失ってしまいます。また、親子が衝突してしまう原因にもなりかねません。
塾という「勉強する場所」に来ることで、家では勉強を始められない生徒でも自然と勉強を始めることができます。
2-4.学習方法や進路について新たな視点を得られることがある
一般に学校は閉鎖的なものです。特に私立中高一貫校の場合は6年間環境が変わりません。それにはメリットもありますが、新しい人や環境と出会う機会は少なくなってしまいます。
中高生は不安定な存在です。子供の世界と大人の世界との間で矛盾や歪みを感じ、社会に対する反発心を抱えながらああでもないこうでもないと試行錯誤して自分のアイデンティティを確立させていく時期です。
だから大抵の中高生は、勉強についても「しっかりやるべきだ」という気持ちと「勉強なんてやってられるか」という両義的な気持ちをもっています。早熟で社会的な規範意識を強く持っている生徒ほどこのような板挟みにあっています。
そのような気持ちと折り合いをつけるためには、親でも教師でもない他者に接し、新たな視点を得たり興味関心の幅を広げたりしながら、自身を社会に対してひらくことが必要になります。
塾に通うことで、そのような機会を得られる可能性があります。
3.デメリットとリスク
塾に通うことで生じるデメリットやリスクについても3点紹介します。
- スケジュールに余裕がなくなる
- 塾の指導目標やカリキュラムが合わない
- 費用対効果が合わない可能性がある
3-1.スケジュールに余裕がなくなる
私立中高一貫生は一般に通学時間が長く、学校からの課題量も多いです。部活や課外活動をしている生徒は既に忙しい日々を送っているでしょう。その上、さらに塾の予定を入れてスケジュールを詰めるべきかは慎重に検討するべきです。
たとえば、塾に通うことで睡眠時間が短くなり、学校や塾の授業で眠くなってしまうようでは本末転倒です。生活の中にどれくらい余白の時間をとるか、最低限キープしておくべき成績の水準はどのくらいか親子間で十分に話しておくべきです。
また、そもそも学校の課題で苦労しているのに塾の課題が追加されると、消化しきれなくなってしまう恐れがあります。適切な量の課題を学校と連動して出してくれる塾であるか、体験授業などの際によく確認しておきましょう。
3-2.塾の指導目標やカリキュラムが合わない
一般的に、集団塾や専門塾は指導目標やカリキュラムが予め決まっています。それらの塾は目的がぴったり合えば頼れる存在でありますが、学校の成績に関する課題を抱えた私立中高一貫生に合うとは限りません。
体験や学習相談時に、お子さんの現状や課題を十分に伝えるとともに、塾の指導内容について確認しておきましょう。
3-3.費用対効果が合わない可能性がある
塾は比較的費用対効果が見積りにくいサービスです。時間とお金をかけて塾に通ったのに効果が感じられない可能性があります。
大切なことは、通う塾の責任者が信頼できること。そして利用者として、自身の気持ちや要望、お子さんの家での様子などを十分に伝えることです。これは塾としても指導の役に立つありがたいことです。熱心な担当者であれば、お子さんの課題解決のためにすべきことを提案してくれるでしょう。
このように、塾-家庭間の円滑なコミュニケーションによって費用対効果が合わないと感じるリスクを減らすことができます。
4.通塾が効果的だったケース
ここで、弊塾の指導ケースのうち効果的だったものを2つ紹介します。
4-1.Aさんの場合
Aさんは横浜市内の私立中高一貫校に通う中学3年生。それまで良かった成績がだんだん悪くなってきたところで、わからないことを解決するために塾に通い始めました。
学校帰りに塾によってわからないところを解決することで、自習がうまく回るようになりました。また、大量の課題や小テストに対してどこに力を入れるべきかなどをこまめに相談。進路の方向性についても、学部学科の選択・推薦か一般かの選択など紆余曲折あるなか、適切なサポートを受けることができました。
目標の一つであった成績を高水準で維持したことで、最終的には指定校推薦で志望大学に進学し、現在は充実した大学生活を送っています。
4-2.Bくんの場合
Bくんは都内私立中高一貫校に通っている中学3年生。国立大学に進学してほしいという保護者の希望はありましたが、入塾時点では実力は全く伴っておらず学習習慣もついていませんでした。さらには、留学の予定があり、1年間日本の高校の授業を受けることはできない予定です。
入塾後しばらくは明確な成績の向上はみられませんでしたが、通塾するうちにだんだんと数学への興味に目覚めていき、留学中は自ら数学Ⅲの教科書を持ち込むほどになりました。大学受験勉強も積極的に取り組み、最終的には関西の名門私立大学に進学しました。
現在はとある名門国立大学の大学院生として数学の研究を行っています。通っている学校の偏差値がそれほど高くなくても、興味の花が開くことで才能を開花させることもあるのです。
5.通塾に最適なタイミング
文部科学省が2年ごとに実施している子供の学習費調査によると中学3年生の通塾率は公立が68.9%、私立が54.8%が1年間の中で学習塾を利用しています。(中学3年生全体の通塾率は約60%)
具体的に、いつから・どのタイミングで塾に通うべきかは生徒の学力や目標によりますが、以下のリストに当てはまる場合は検討してみることをおすすめします。
- 定期テストの得点が3回連続で平均点を下回る
- 定期テストの順位 (or偏差値)が3回連続で下がっている
- それなりに勉強しているのに結果がついてこないと感じるようになった
- やりたいことが多く何事にも集中して取り組めていない
- 勉強しようという気持ちはあるがついサボってしまう
▼参考記事
6.塾選びの2つのポイント
最後に、実際に塾を選ぶときに留意しておいてほしいポイントを2つお伝えします。
6-1.課題を整理しよう
塾を探しはじめるときに、まずは現状の課題を思いつく限り書き出してみてください。これは書くことそのものではなく、言葉にし可視化することによって、課題を意識・整理することが目的です。
課題が明確になり、場合によっては塾に行かずに、勉強方法を工夫したり環境を改善することで解決できるかもしれません。
また、書き出した内容は塾の体験授業を受ける際に持って行ってみてください。生徒全般にあてはまることでもありますが、とりわけ中高一貫生は成績が低迷している原因にさまざまな要因が絡み合っていることが多いです。
塾としては、できるだけ様々な視点から成績を向上させる手立てを打っていきたいと考えているため、生徒保護者視点の課題リストは指導の助けになります。
6-2.本人の通塾意思について
塾に通うにあたって本人に通塾意思があることは重要です。親が勝手に塾通いを決めると、子どもは納得できず、前向きに勉強することが難しくなってしまうでしょう。塾に通う前に子供の通塾意志を確認することは必須といえます。
とはいえ子どもの「通塾意思」は様々です。当初はそこまで強い意志を持っていなかった生徒が、塾に通う中で次第に意識を高めていくというのはしばしばあることです。重要なのは、実際に勉強することで生徒が持っている小さな「勉強への意思」を育てることです。
だから保護者はお子さんの意思が完全に育つまで待った方が良いと考える必要はありません。保護者とお子さんとのコミュニケーションの中で、両者が納得できるタイミングを見つけることが大切です。
私たちは、横浜にある小さな個別指導の学習塾です。
受験をはじめとした勉強において、固定的なカリキュラムや決まった勉強方法に生徒を適応させることに意識が向きがちです。
私たちはそれらを大切にすると同時に「生徒」を中心とした学習方法を提案し実践することが、生徒が勉強を楽しむことに繋がり、学力の向上につながると考えています。
「自分に合ったやり方で勉強したい」「どうせやるなら勉強を好きになってもらいたい」という方は是非ティーシャルをご検討ください。