問題文を「きちんと」読むためにできる7つのこと

問題文を読む女子高校生

こんにちは。坂本です。

先日ある生徒の数学の授業をしていて、問題文を「きちんと」読むことの難しさを感じたので記事にしたいと思います。

結構長い記事になっています。問題文を「きちんと」読むための7つのポイントはページ下半分にのっています。(目次参照)

問題文を読むことは重要

問題文を読むことはとても重要です。問題文を読み、問題の状況を理解することで問題の8割は解けたといっても過言ではないと思います。

どんなに勉強を頑張って知識をつけても問題文が正しく理解できていなければ正解できません。

また、文を読んでそれを理解し応答するというのは将来の仕事や法的手続きから趣味や研究まで様々な場面で使います。

問題文を読むことは基本的だが簡単ではない

問題文を読むことができていないというと、「うちの子供はそんな基本的なこともできていないの!」と思うかもしれません。

しかし、問題文が「きちんと」読めていないということは、学力が高い人も含めて非常に多くの生徒が抱えている一般的な問題です。

なぜ問題文を読むことは難しいのか

なぜ学力がある人でも問題文を「きちんと」読むことが難しいのでしょう。その理由を問題文の読解に限らず一般的な文章を読むプロセスも含めて検討します。

問題文を読むことに注意を向ける段階

そもそも問題文に注意できていない生徒は多いです。当たり前ですが、文章を読むためにはその文章に注目する必要があります。

問題文を読む習慣がない

問題文を読むというのは、自然とできることではありません。けっこう特殊な行為なのです。

日常生活の中で文を読むことはあっても一言一句読み取らなけらばならないことはほとんどありません。例えば小説を読むにしたって、雑誌を読むにしたって、ところどころ読み飛ばしながら読むことがほとんどなわけです。

学校の勉強ではどうでしょう。実は学校の問題でも問題文を読み取らなければならない場面はそう多くありません。

それなりに長い問題文を読むということはトレーニングを積んで初めてできることなのです。

問題文を読むことが重要だと思っていない

ある程度カンのいい生徒であれば問題文をほとんど読まなくても正解することができます。そういう人にとっては問題文を読むことはただのめんどくさいことです。

でも、問題文をしっかり読まずにいると、いつかそれでは解けない問題にぶつかります。それまで問題文を読むトレーニングができていなかった人はそこで苦労します。

算数が得意だけど数学はあまり得意ではないという人はこのタイプであることが多いと思います。(データはありませんが。)

文字自体に拒否反応を示す場合がある

文字がたくさんあるとそれだけで「嫌っ」となってしまう場合もよくあります。こういう場合は問題文の一部を隠すなど、一度に読む量を減らしてあげることで解決することがあります。

文字を認識する段階

問題文を読むことに注目することができたとしましょう。次に、文字の認識の仕方について説明します。

文を読むとき視点はジャンプを繰り返している

私たちは文を読むときに一文字一文字を滑らかにたどっているわけではありません。

文を読むとき、視点は短い静止時間(4分の1秒ほど)ごとに、ジャンプを繰り返しています。

この短い静止時間は固視あるいは停留と呼ばれ、ジャンプの方はサッカードあるいは跳躍運動と呼ばれています。

サッカードは7~9文字分(英語の場合)行われます。素早く急なため自分では意識することができません。文の先に移動することが多いですが、戻って読み直すこともあります。(10~15%程度)

一度に約15文字分を認識する(英語の場合)

文章を読むときは今読んでいる箇所の次の文字を15文字ほど知覚しています。(英語の場合)その中で、意味を読み取ることができるのはその半分ほどになります。

最初と最後の文字が正しければ間違っていても読める

私たちの目が、文章を飛び飛びで・塊ごとに認識していることを示す例をもうひとつ紹介したいと思います。

次の文を読んでみてください。

たごんの もじが ごゃちちごゃに いれわかってていも、この だんらくを よめる かせいのうは あまりす。

『インターフェースデザインの心理学』p33より

『インターフェースデザインの心理学』p33より

実は、この文は、単語の中の文字がめちゃくちゃに入れ替わっています。気付かずに読めてしまった方も多いのではないでしょうか。正しくは、「(太字の文)」になります。

「たんごの もじが ごちゃごちゃに いれかわっていても、 この だんらくを よめる かのうせいは あります。」

もちろん、正しい単語を知っていることが前提ですが、黙読においては、私たちが決して左から右に(上から下に)一文字ずつ読んでいるのではないことがわかります。

文字を理解する段階

これまで、書いてあることをそれ自体認識する、認知することについて説明してきました。文字や文を認知することと、内容を理解することは同じではありません。文の内容を理解するとはどのようなことなのでしょうか。

読むことと理解することは同じではない

ここでも、まず一つ文章を読んでみてもらいたいと思います。

まず分類をします。色で分けるのが一般的ですが、生地や扱い方など他の特性で分けてもよいでしょう。分け終わったら準備完了です。この別々に分けたブループごとに処理していくことが大切です。一度に一つのグループだけを入れてください。

『インターフェースデザインの心理学』p35より

何についての文章でしょうか。よくわからないですね。では次の文はどうでしょうか?

この洗濯機の使い方

まず分類をします。色で分けるのが一般的ですが、生地や扱い方など他の特性で分けてもよいでしょう。分け終わったら準備完了です。この別々に分けたブループごとに処理していくことが大切です。一度に一つのグループだけを入れてください。

『インターフェースデザインの心理学』p35より

上の文にたった9文字の見出しをつけただけですが、「この文章は何を説明するのか」がわかり、格段に読みやすくなったのではないかと思います。

知っている言葉に読みかえる

私たちは文章を読んでいる時、書いてある文章をそのまま読むのではなく、自分の知っている言葉や言い回しに置き換えて読む傾向があります。年齢とともに語彙が豊かになるとそうした機会も減っていくでしょうが、1冊の本の中に自分の知らない言葉がひとつもない、というケースは、珍しいのではないかと思います。

これは、授業で国語の問題文(本文)を音読してもらったときには必ずと言っていいほど起こることです。

同じ現象が英語の文章では比較的起きにくいのですが、これは英語にはそもそも知っている言葉や言い回しが少ないからではないかと思います。

問題文独特の言い回し

問題文には独特の表現があります。

例えば物理の問題では”なめらかな面”という表現があったらそれは「摩擦を無視して考えても良い」ということになります。このような表現を知らないと途端に読むスピードと精度が落ちるように思います。

問題文の意味を受け入れることの難しさ

問題文を文字として読むことができ、その意味を理解することができても、まだ問題文をきちんと読んだとはいえません。

問題文の意味内容を受け入れるという段階があります。実際にあった例では

「点Pは頂点Aから出発して、毎秒1cmの速さで、辺上をB、C、Dの順にDまで動く。」

をきちんと読めているにも関わらず、点Cの後どこに動くのかがわからなくなってしまった場合があります。

このように文を読めて意味を知っていても、わかっていないということがあるのです。

私はこの状態を「問題が自分ごとになっていない」というように表現しています。身体的、感覚的ななレベルで文章と自信を結びつける必要があると思います。

ここまでのまとめ

  • 問題文を読む習慣やモチベーションがない
  • 文を読むとき1文字ずつではなく7~9文字のまとまりごとに読んでいる
  • 文章の主題がわかっていないと理解しにくい
  • 文を理解できたからといってokとは限らない

問題文を「きちんと」読むためにできる7つのこと

ここからは問題文を読むためにできることを紹介します。私たちが教室レベルで取り組んでいること、あるいは個人レベルで取り組んでいることが中心です。もし「こんな方法があるよ」ということがあればお知らせ頂けるとうれしいです!

1.細かく区切って読む

長い文章は細かく区切って読みます。どれくらいで区切るかは人によって異なりますが、読点(、)ごとに理解できたかどうかを確認します。これは、私の経験上最も有効です。

2.音読する

上で述べたように目で文章を読むときは1文字1文字認識しません。しかし、声に出して読むことで文の要素を逃さず認知しやすくなります。

実際に生徒に音読をしてもらうと、実は音読でもかなり読み飛ばしているということがわかります。

初めはゆっくり読むことをおすすめします。

3.重要な箇所にチェックを入れる

読んだ問題文の大事なところに線を引いたり、丸で囲ったりします。例えば「この文章について述べたものとして最も適するものを次の中から一つ選び、その番号を答えなさい。」だったら「最も適するもの」「一つ」「番号」の三箇所にチェックをします。

4.リーディングトラッカーで文章の一部分を隠してみる

リーディングトラッカーとは、文章の上に被せるように置くことで両隣の行の文字を隠して読み進める読書補助具です。

視界に入る文字数を減らして、注目する文を明確にできるとともに、改行時に同じ行を読んでしまう、といったミスを減らすこともできます。

5.語彙を増やす

あたりまえですが、語彙を増やすことはとても重要です。

問題文を読むときに取り込んだ情報は既に持っている知識や考え方の中に組み込まれることで、理解することができるのです。

6.パターンを覚える(名前をつける)

問題文の出題の仕方には一定のパターンがあります。例えば数学で「点PがAを出発し四角形ABCD上を…」という問題があったとき、問題パターンを覚えている人であれば「四角形ABCDの辺上を一定の速度xで点Pが動き、点Pを頂点に含む三角形の面積を時間xの式で表し、グラフを書く問題かな。」と予測できると思います。

ここまでではなくとも、上で例にした「この文章について述べたものとして最も適するものを次の中から一つ選び、その番号を答えなさい。」という問題であれば「本文の内容理解」の問題というパターン(主題)がわかると問題文の読解は一気に易しくなります。

6.図や絵にする

文に書いてあることを図や絵にする。これもとても有効です。例えば、りんごとみかんの合計金額に関する方程式の文章問題であれば、まずはりんごとみかんの絵を描いてみます。合計10個なら10個描いてみてもいいと思います。

ねらいとしては「りんご」「みかん」という抽象的な観念で考えるのではなく、できるだけ目の前にりんごとみかんの実物があるかのような状況をつくるということにあります。

文章を「きちんと」理解するということは、観念としての理解と身体的な経験とが結びつくことだと考えています。

7.表をつくる

表をつくって整理することは条件が多い問題文を読むときの最もスタンダードな方法です。特に数学の方程式の文章題や確率、化学の計算問題などで大活躍します。

表に慣れていない人は、ますは教科書や参考書に載っている表をフリーハンドで写してみることをお勧めします。

終わりに

普段は問題文を丁寧に読まず、テストになったらしっかり読むようにしている人がいるかと思います。

逆です。普段の練習の時こそ問題文をしっかり読みましょう。逆にテストの時は時間の制限もあり問題文をじっくり読んでいる暇はないことが多いかと思います。

テストの時は問題のパターンが頭に入っていればそれをベースに素早く判断すれば大丈夫。そのために練習の時に丁寧に、じっくりと問題と向き合うようにしてみてはいかがでしょうか。

参考にした本

インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針

デザインは相手から反応を引き出すための大事な要素です。買ってほしい、読んでほしい、行動を取ってほしいなど、相手の反応を誘い出すためにデザインをします。人間の行動原理を理解していないデザインは相手を混乱させるだけで目的の結果を得ることができません。本書ではすべてのデザイナーが知るべき100の指針を実践例とともに紹介します。すべてが科学的な研究から導き出されたものです。

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この記事を書いた人

坂本 諒

ティーシャル代表。数学、物理、化学などを担当。

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