計算ミスをなくすために身に付けたい5つの習慣

「計算ミスが多くて思ったような結果が出なかった。」

定期テストや模試の結果をもらった生徒から聞く声の定番ですね。日本の中高生のほとんどの人が計算ミスを減らしたいと一度は思ったことがあるのではないでしょうか。

この記事では、計算ミスを減らすためにできることまでを、そもそも間違いの原因はそもそも計算ミスがなのかということから書いていきます。

0.計算ミスを減らそうとする前に

冒頭で、試験結果をもらった生徒から「計算ミスが多くて思ったような結果が出なかった」とよく聞くことをお伝えしました。しかしぼくの経験では、実際に答案をみせてもらうと間違いの原因は計算ミスではなかったということがしばしばです。

実は、生徒が計算ミスと思っている間違いの多くは単なる計算の原則の理解不足であることが多いのです。このようなギャップが生まれる原因としては、「計算ミス」と「計算の原則の理解不足による間違」いの区別ができていないということ、計算ミスのせいにしておけば「理解していない自分」を避け、「本質的な復習(=手間のかかる復習)」を後回しにできるという心理がはたらくことがあると思います。

いずれにしても結果を出したいのであれば避けて通れない問題です。心理的な面はまた別の記事で述べることにして、まずは計算の原則を理解するということから紹介していきます。

1.計算の原則を理解する

さきほど、「計算ミス」と「計算の原則の理解不足による間違い」の区別といいましたがその境界は曖昧でどこからが「計算ミス」で「計算の原則の理解不足による間違い」とするかは微妙なところです。

しかし、計算の原則を理解することは、理解不足による間違いも減らしますし、計算ミスも減らしてくれるということは間違いありません。ここからは計算と方程式の違いを比べながら計算の原則を二つ紹介します。

計算と方程式の区別

一般に計算問題と呼ばれるものは大きく二つに分かれます。ひとつは計算の問題、もう一つは方程式の問題です。

計算の問題の例

計算の問題というのは例えば以下のような問題です。

[問題]
次の計算をしなさい。
x+23+3x54
[解答]
x+23+3x54
=4x+812+9x1512

(分母分子に4,3をかけ分母を揃える)

=4x+8+9x1512
=4x+9x+81512
=13x712

方程式の例

方程式の問題というのは例えば以下のような問題です。

[問題]
次の方程式を解け。
x+23+3x54=0
[解答]
x+23+3x54=0
12×(x+23+3x54)=0×12

(両辺に12をかける)

4×(x+2)+3×(3x5)=0
4x+8+9x15=0
13x7=0
13x7+7=0+7

(両辺に7をたす)

13x=7
x=713

(両辺を13で割る)

計算問題と方程式の問題は与えられる式は似ていますが、計算の方法が異なります。二つの問題・計算方法の区別ができていないと、計算の問題を方程式のやり方で解いてしまい間違えてしまったり答えが出せなくなったりすることがあります。

このようなミスを減らすためには、問題文や問題の式をよく読んで、計算の問題を解いているのか、それとも方程式を解いているのかという意識をもつことが大事です。

次に、計算の原則として覚えておくと良い二つのことを紹介します。

原則①両辺に同じ数をかけてもいい

イコールでつながれた式(方程式)の場合両辺に同じ数の四則演算をすることができます。全ての方程式はこの原則の徹底で解くことができます。

原則②分母分子に同じ数をかけてもいい

分母分子に同じ数をかけてもいいという原則も常に意識しておくとよいでしょう。分母分子に同じ数をかけるというのは1をかけていることと同じです。計算の問題でとても役に立ちます。

+α文字式は具体的なものをイメージする

二つの原則に加えて文字式の計算をする時のコツを紹介します。

以下のような文字式の問題の間違え方として以下のようなものがあります。これは計算ミスでしょうか?

[問題]
次の計算をしなさい。
  1. 2a+3a
  2. 5a2a
[解答]
  1. 2a+3a=5a2
  2. 5a2a=3

1.では「2aのaに3aのaが重なったのだからaは2乗になるはずだ」のようなイメージ、2.では「5aのaから2aのaが引かれたのだからaは消えるはずだ」というイメージで考えられています。

しかし、これは誤解です。それも計算ミスではなく計算の原則の理解不足による間違いです。正解は以下のようになります。

[正答]
  1. 2a+3a=5a
  2. 5a2a=3a

このように考えるためのヒントとしてぼくは「aはみかんだと思って」と伝えます。みかんじゃなくても何でもいいんですが、具体的なものをイメージしてもらいたいということです。aなどの文字は抽象的なため数式の中で何をしているかわかりにくいのですが、aだとよくわからなくなかった計算も、みかんだと思うだけでうまくいくケースがけっこう多いのです。

このように、文字式の文字を具体的なものに置き換えて考えることで、足し算引き算のルールを理解しやすくなり、結果として計算ミスを減らすことができます。

2.楽な手順で計算する

ここまでで、計算の原則の理解不足による間違えについてみてきました。ここまででの内容が抑えられて入れば、これまで計算ミスとしていた間違いの半分は防ぐことができるようになるかと思います。ここからは、より純粋な計算ミスを防ぐ方法を紹介します。

因数分解の状態を保つ

計算の途中式では、できるだけ因数分解の状態を保ったまま計算した方が楽なことが多いです。

例えば式の途中で12 × 13という計算が出てきたときに12 × 13 = 156とせずに、12 × 13のままで計算を進め、一番最後にかけ算を行うという方法です。約分等により最終的にかけ算をする必要がなくなるときに無駄を省くことができますし、何をかけて何を割っているのかが明確なので確かめもやりやすくなります。

分数・少数はすぐに消す

分数や少数の出てくる計算は、計算が得意な人にとっても厄介な存在です。計算を解くときはできるだけ早い段階で分数や少数をなくす、もしくは分数や少数を気にしなくてもよいように式を変形します。式をできるだけシンプルな形に保つことで余計な注意を払わなくてすみ、結果として計算のスピードや正確さが上がります。

3.よく出てくる式や変換を覚える

よくでてくる式や値の変換を予め覚えておけば、その分速く正確に計算することができます。

例えば、九九を小学校で覚えておくことで一桁のかけ算をするときにほとんど頭を使わずに結果を得られるというのは多くの人が実感できることだと思います。九九以外には様々な数の倍数であったり、平方数(ある数を2回かけた数)、√の変換などがあります。(下図参照)

計算ミスを減らすために覚えておきたい頻出の式や変換の一覧
よく出てくる式や変換の種類

九九などの四則計算

9×9=81
よく見る分数の計算

12+13=56
倍数

25×4=100
平方数

122=144
ルートの変換

12=23
ルートの概数

2=1.41421356・・・
階乗

6!=720
三角比の代表的な値

sin30°=12

さて、覚えた方が計算が速いのであれば、これらを丸暗記してくださいというかというと必ずしもそうではありません。

確かに最終的には覚えている方が計算が早くなるのは間違いないのですが、一定の理解の上で「結果的に覚えてしまった」となるような勉強をすることをお勧めします。忘れてしまうから、また、思い出すためのコストが高くなるからです。

ぼくは三角比の代表的な値の表をとりあえず暗記しろという指導は特に避けるべきだと思います。sin30° = 1/2とかいうのをいくつも機械的に覚えようとするのは時間の無駄です。

ただし、九九を含む四則計算は例外だと考えています。暗記することを目的に100マス計算のようなトレーニングをするのも場合によっては有効です。

4.計算の書き方を工夫する

計算式を書くことを面倒だと考える人は多いのではないでしょうか。頭で考えればわかることをどうしてわざわざ書かなくてはいけないのかと思うかもしれません。

ぼくはこう考えています。計算過程は頭で考えていることを補うものではなく、計算を書くことで頭を働かせるためのものだということです。

計算を素早く解くというのは、頭の中だけで完結する行為ではなく多分に身体的なものだと思います。

これはピアノを弾くのと似ていると思います。頭の中で鍵盤の操作がわかるからって鍵盤を叩かない人はいないでしょう。鍵盤を叩くことによって起きるフィードバックが演奏者に作用しインタラクティブに作られるのが演奏です。

計算も同様に書くことによって、手や目で感じたことが再帰的に作用し思考を促しているのではないかと思います。

そういうわけで、計算式を書くことは重要ですし、どのように書くかというのもよく考えなければならないことです。

広いスペースに一定以上の大きさで書く

まず、計算のための余白を必ず取りましょう。問題集は計算のためのスペースが少ないことが多いですから、書き込むことはお勧めしていません。ノートかA4程度の計算用紙を用意しておくとよいです。

大学ノートを使用している人には、お願いだから一行に分数を収めようとしないでと伝えたいです。字の大きさは個人差が大きいですが自然にかける大きさでどちらかというと大き目に書くことを意識してもらいたいと思います。

改行しイコールを揃えて縦に並べる

式を書くときは一回の変形ごとに縦に並べて書きましょう。このときイコールを揃えるようにしてください。

一行で一つの計算をする

基本的に一回の改行で一つの計算を行うという意識をもちます。これは目に見えないため軽視されがちで、第三者の指摘が必要なことが多いと感じます。

以下は省略したことにより計算ミスがおこる代表的な例です。

[問題]
次の式を平方完成しなさい。
y=2x2+4x+3
[一行で一回の計算をして正答する例]
y
=2x2+4x+3
=2(x2+2x)+3
=2{(x+1)212}+3
=2(x+1)22+3
=2(x+1)2+1
[計算を省略し間違える例]
y
=2x2+4x+3
=2(x+1)212+3
=2(x+1)2+2

計算を省略して間違えてしまうことのもう一つの問題点として、見直しや復習の質が低くなりがちだということがあります。一行に一回の計算であれば計算過程のどこで間違えてしまったのかを発見しやすいですが、計算を省略してしまった場合は省略してしまった部分にミスがあることが多くなります。そしてそれは発見することが困難です。

5.ミスがないか確かめる

どんなにミスに気をつけていても、計算ミスは必ず起こります。計算ミスを起こさないようにする努力は一定の量を越えると効果が低くなります。ですから、ミスが起きたときにそれを発見し修正できるようにしておくことも重要です。

解答が大きく外れていないか確認する

計算結果が出すべき解答に大きく外れていないかを確認します。

例えば確率であれば1を超えない、三角関数でも1を超えない、値段を出す問題であれば正の整数であるといったことです。このような確認はお手軽で効果の高いミスの方法です。

計算ミスのパターンを知る

練習の中で自分がどんなミスをしているのかを知りましょう。大事なのはミスを言語化するということです。例えば「分数を含む多項式の計算問題で、通分して()を外すときに()の符号ミスが起こる」といった感じです。

多くの場合、一人の人が同じ計算ミスを繰り返しているので毎回言語化すれば、ミスを意識化することができ事前にミスに気をつけるということも可能になります。

検算する

数学の試験において検算は重要です。自分が書いた式を見直し、原則に反していないか、変形した式は元に戻ることができるかなど確認することでミスの発見につながります。

時々、普段は検算せず「テストの時はやるから」といっている人がいますが、普段から検算していない人は本番でもできません。程度の差こそあれ普段から検算しておきましょう。

検算する時のポイントは、都合よく考えるということです。(それっぽくいうと仮説思考ともいう。)計算した結果が解答と合わなかったり、汚い値になった時に「ここがこの値だったら綺麗な答えになるのにな。」と思った経験ありませんか。横着な思考だと思われるかもしれませんがこの感覚が結構頼りになります。ぜひ試してみてください。

自習の効率に大きく影響

さて、実際には数学のテストは時間が足りず、検算する時間なんてないというケースも多いかもしれません。そうであれば検算する価値は少なくなってしまいます。

しかし、検算することにはもう一つ大きな価値があります。それは、問題集を使って自習するときの効率を高めるということです。

問題集を解いていると、必ず自分の式が解答と合わないことが起こります。そういったときに、検算が上手な人は自分の式の違うところを素早く発見し修正することができます。これができるかどうかは、他人を頼れない自習において、学習効率を大きく左右します。

まとめ

ここまでの話をまとめると計算ミスを減らすコツはこのようになります。

  1. 二つの原則①両辺に同じ数をかけてもいい②分母分子に同じ数をかけてもいいを理解する
  2. 文字は単なる文字とみなすのではなく、具体的なものをイメージする
  3. 計算途中では因数分解の状態を保つ
  4. 分数・小数はすぐに消す
  5. よく出てくる式や変換を覚える
  6. 広いスペースに一定以上の大きさで書く
  7. 改行しイコールを揃えて縦に並べる
  8. 一行で一つの計算をする

一番大事なのは二つの原則①両辺に同じ数をかけてもいい②分母分子に同じ数をかけてもいいを理解するです。ぜひ実行してみてください。

この記事を書いた人

坂本 諒

ティーシャル代表。数学、物理、化学などを担当。

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