計算ミスをなくすための5つの方法【原因と対策】
- 「やり方はわかったのに、計算ミスしてしまった…。」
- 「間違えた問題の半分以上ケアレスミスだった…、つらい。」
- 「計算ミスがなかったら、ほとんど正解だったんだよ!」
数学や理科のテストが返ってきたときに生徒からよく聞く言葉です。
計算ミスというのは厄介なもので、参考書を読んだり問題集を解くだけではなかなかなくなりません。なぜなら、計算ミスには以下のような性質があるからです。
- 内容は理解している(と生徒本人が思っているため)復習が軽視される
- 計算ミスの原因が生徒自身で意識しづらい癖や習慣にある
そのため、計算ミスをなくすには考え方の癖や習慣を変える必要があります。
この記事では計算ミスをなくすためにできることを、個別指導で数学・物理・化学などを教えてきた経験をもとにをまとめました。読んで参考になったら、ぜひ普段の学習時に実行してみてください。
計算ミスをなくすことが合格の必要条件
入試問題の前半は計算問題や易しめの小問であることが多く、これを確実に正解することが安定した得点につながります。
特に、合格不合格の当落線上にいる受験生にとっては「1点が合否を分ける」ということもあるでしょう。公立高校受験や共通テスト(2021年にセンター試験から変更)をはじめとする、受験生の学力の幅が広い試験においては、計算ミスをなくすことが重要です。
易〜標準の問題を計算ミスなく確実に正解できるということは、受験において合格の必要条件なのです。
そもそも本当に計算ミスなのか
冒頭で、試験結果をもらった生徒から「計算ミスが多くて思ったような結果が出なかった」とよく聞くことをお伝えしました。しかし、ぼくの経験では、実際に答案をみせてもらうと間違いの原因は計算ミスではなかったということがしばしばあります。
実は、生徒が計算ミスと思っている間違いの多くは単なる計算の原則の理解不足であることが多いのです。
どうして計算ミスでないものを計算ミスだと思うのか
このようなギャップが生まれるのは、技術的な面と心理的な面の二つの原因があるように思います。
技術的な面の原因とは「計算ミス」と「計算の原則の理解不足による間違」いの区別ができていないということです。心理的な面の原因は計算ミスのせいにしておくことで「理解していない自分」と向き合うこと避け「本質的な復習(=手間のかかる復習)」を後回しにできるということです。
いずれにしても結果を出したいのであれば避けて通れない問題です。心理的な面はまた別の記事で述べることにして、この記事では計算ミスを認識し、減らす技術について紹介していきます。
1.計算の原則を理解して計算ミスを減らす
さきほど、「計算ミス」と「計算の原則の理解不足による間違い」の区別に触れましたが、その境界は曖昧でどこからが「計算ミス」で「計算の原則の理解不足による間違い」とするかは微妙なところです。
しかし、計算の原則を理解することは、理解不足による間違いも減らしますし、計算ミスも減らしてくれるということは間違いありません。ここからは計算と方程式の違いを比べながら計算の原則を二つ紹介します。
計算と方程式の区別
一般に計算問題と呼ばれるものは大きく二つに分かれます。ひとつは計算の問題、もう一つは方程式の問題です。
計算の問題の例
計算の問題というのは例えば以下のような問題です。
(分母分子に4,3をかけ分母を揃える)
方程式の例
方程式の問題というのは例えば以下のような問題です。
(両辺に12をかける)
(両辺に7をたす)
(両辺を13で割る)
計算問題と方程式の問題は与えられる式は似ていますが、計算の方法が異なります。二つの問題・計算方法の区別ができていないと、計算の問題を方程式のやり方で解いてしまい間違えてしまったり答えが出せなくなったりすることがあります。
このようなミスを減らすためには、問題文や問題の式をよく読んで、計算の問題を解いているのか、それとも方程式を解いているのかという意識をもつことが大事です。
次に、計算の原則として覚えておくと良い二つのことを紹介します。
原則①等式の両辺には同じ数の四則計算をすることができる
一つ目の計算の原則は等式の両辺には同じ数の四則計算をすることができるということです。
全ての方程式はこの原則の徹底で解くことができます。自分の方程式の解き方に自信がないときはこの原則にあてはめることができるかどうかでやり方が正しいかどうかを確認することができます。
原則②分母分子に同じ数をかけてもいい
もう一つの計算の原則は分母分子に同じ数をかけてもいいということです。分母分子に同じ数をかけるというのは元の式に1をかけていることと同じです。(方程式でない)計算の問題でとても役に立ちます。
+α文字式は具体的なものをイメージする
二つの原則に加えて文字式の計算をする時のコツを紹介します。
以下のような文字式の問題の間違え方として以下のようなものがあります。これは計算ミスでしょうか?
1.では「2aのaに3aのaが重なったのだからaは2乗になるはずだ」のようなイメージ、2.では「5aのaから2aのaが引かれたのだからaは消えるはずだ」というイメージで考えられています。
しかし、これは誤解です。それも計算ミスではなく計算の原則の理解不足による間違いです。正解は以下のようになります。
このように考えるためのヒントとしてぼくは「aはみかんだと思って」と伝えます。みかんじゃなくても何でもいいんですが、具体的なものをイメージしてもらいたいということです。aなどの文字は抽象的なため数式の中で何をしているかわかりにくいのですが、aだとよくわからなくなかった計算も、みかんだと思うだけでうまくいくケースがけっこう多いのです。
このように、文字式の文字を具体的なものに置き換えて考えることで、足し算引き算のルールを理解しやすくなり、結果として計算ミスを減らすことができます。
2.楽な手順で計算することで計算ミスを減らす
冒頭でもお伝えした通り、計算ミスの多くは実は計算ミスではなく計算の原理の理解不足であることが多いです。ですから、ここまででの内容がしっかり理解できるようになれば、計算ミスは半分は防ぐことができるようになるかと思います。
次に、計算の手順の工夫によってできるだけ楽に計算する方法を紹介します。
因数分解の状態を保つ
計算の途中式では、できるだけ因数分解の状態を保ったまま計算しましょう。
例えば式の途中で12 × 13という計算が出てきたときに、12 × 13 = 156とせずに、12 × 13のままで計算を進め、最後に答えを出す時にかけ算を行うという方法です。
約分等により最終的にかけ算をする必要がなくなるときに無駄を省くことができますし、何をかけているか何で割っているのかが明確なので確かめもやりやすくなります。
分数・少数はすぐに消す
分数や少数の出てくる計算は、計算が得意な人にとっても厄介な存在です。計算を解くときはできるだけ早い段階で分数や少数をなくす、もしくは分数や少数を気にしなくてもよいように式を変形します。式をできるだけシンプルな形に保つことで余計な注意を払わなくてすみ、結果として計算のスピードや正確さが上がります。
3.よく出てくる式や変換を覚えて計算ミスを減らす
よくでてくる式や値の変換を予め覚えておけば、その分速く正確に計算することができます。
例えば、九九を小学校で覚えておくことで一桁のかけ算をするときにほとんど頭を使わずに結果を得られるというのは多くの人が実感できることだと思います。九九以外には様々な数の倍数であったり、平方数(ある数を2回かけた数)、√の変換などがあります。(下図参照)
よく出てくる式や変換の種類 | 例 |
---|---|
九九などの四則計算 | |
よく見る分数の計算 | |
倍数 | |
平方数 | |
ルートの変換 | |
ルートの概数 | |
階乗 | |
三角比の代表的な値 |
さて、覚えた方が計算が速いのであれば、これらを丸暗記してくださいというかというと必ずしもそうではありません。
確かに最終的には覚えている方が計算が早くなるのは間違いないのですが、一定の理解の上で「結果的に覚えてしまった」となるような勉強をすることをお勧めします。忘れてしまうから、また、思い出すためのコストが高くなるからです。
例えば、学校で数Ⅰで三角比を初めて習う時に、代表的な値をとりあえず暗記するという方針を時々みかけますが、避けるべきかと思います。sin30° = 1/2とかいうのをいくつも機械的に覚えても、すぐに忘れてしまうため時間の無駄です。
ただし、九九を含む単純な四則計算は例外で、暗記することを目的に単純な計算の反復練習や100マス計算のようなトレーニングをするのも有効だと思います。
4.計算の書き方を工夫して計算ミスを減らす
計算式を書くことを面倒だとか、計算式を書かずに正解できたらエラい!と言って計算を書きたがらない生徒、とても多いです。そしてそういう生徒のほとんどが計算ミスを繰り返しています。
生徒たちの言い分はこうです「頭で考えればわかることをどうしてわざわざ書かなくてはいけないのか。」
ぼくはこう考えています。計算過程は頭で考えていることを忘れないようにするだけのものでなく、計算を書くことによってより良い方法を発見するたに書くということです。
計算を素早く解くというのは、頭の中だけで完結する行為ではなく、身体的な行為を含みます。(手を動かす、式を目で追うなど。)
これはピアノを弾くのと似ていると思います。頭の中で鍵盤の操作がわかるからって鍵盤を叩かない人はいないでしょう。鍵盤を叩くことによって起きるフィードバックが演奏者に作用しインタラクティブに作られるのが演奏です。
計算も同様に、書くことによって手や目で感じたことが再帰的に作用し、新たな思考を促しているのではないかと思います。
そういうわけで、計算式を書くことは重要ですし、どのように書くかというのもよく考えなければならないことです。
広いスペースに一定以上の大きさで書く
まず、計算のための余白を必ず取りましょう。問題集は計算のためのスペースが少ないことが多いですから、書き込むことはお勧めしていません。ノートかA4程度の計算用紙を用意しておくとよいです。
大学ノートを使用している人には、お願いだから一行に分数を収めようとしないでと伝えたいです。字の大きさは個人差が大きいですが自然にかける大きさでどちらかというと大き目に書くことを意識してもらいたいと思います。
改行しイコールを揃えて縦に並べる
式を書くときは一回の変形ごとに縦に並べて書きましょう。このときイコールを揃えるようにしてください。
一行で一つの計算をする
基本的に一回の改行で一つの計算を行うという意識をもちます。これは目に見えないため軽視されがちで、第三者の指摘が必要なことが多いと感じます。
以下は省略したことにより計算ミスがおこる代表的な例です。
計算を省略して間違えてしまうことのもう一つの問題点として、見直しや復習の質が低くなりがちだということがあります。一行に一回の計算であれば計算過程のどこで間違えてしまったのかを発見しやすいですが、計算を省略してしまった場合は省略してしまった部分にミスがあることが多くなります。そしてそれは発見することが困難です。
5.ミスがないか確かめて計算ミスを見つける
どんなにミスに気をつけていても、計算ミスは必ず起こります。計算ミスを起こさないようにする努力は一定の量を越えると効果が低くなります。ですから、ミスが起きたときにそれを発見し修正できるようにしておくことも重要です。
解答が大きく外れていないか確認する
計算結果が出すべき解答に大きく外れていないかを確認します。
例えば確率であれば1を超えない、三角関数でも1を超えない、値段を出す問題であれば正の整数であるといったことです。このような確認はお手軽で効果の高いミスの方法です。
計算ミスのパターンを知る
練習の中で自分がどんなミスをしているのかを知りましょう。大事なのはミスを言語化するということです。例えば「分数を含む多項式の計算問題で、通分して()を外すときに()の符号ミスが起こる」といった感じです。
多くの場合、一人の人が同じ計算ミスを繰り返しているので毎回言語化すれば、ミスを意識化することができ事前にミスに気をつけるということも可能になります。
検算する
数学の試験において検算は重要です。自分が書いた式を見直し、原則に反していないか、変形した式は元に戻ることができるかなど確認することでミスの発見につながります。
時々、普段は検算せず「テストの時はやるから」といっている人がいますが、普段から検算していない人は本番でもできません。程度の差こそあれ普段から検算しておきましょう。
検算する時のポイントは、都合よく考えるということです。(それっぽくいうと仮説思考ともいう。)計算した結果が解答と合わなかったり、汚い値になった時に「ここがこの値だったら綺麗な答えになるのにな。」と思った経験ありませんか。横着な思考だと思われるかもしれませんがこの感覚が結構頼りになります。ぜひ試してみてください。
自習の効率に大きく影響
さて、実際には数学のテストは時間が足りず、検算する時間なんてないというケースも多いかもしれません。そうであれば検算する価値は少なくなってしまいます。
しかし、検算することにはもう一つ大きな価値があります。それは、問題集を使って自習するときの効率を高めるということです。
問題集を解いていると、必ず自分の式が解答と合わないことが起こります。そういったときに、検算が上手な人は自分の式の違うところを素早く発見し修正することができます。これができるかどうかは、他人を頼れない自習において、学習効率を大きく左右します。
まとめ
ここまでの話をまとめると計算ミスを減らすコツはこのようになります。
- 二つの原則①両辺に同じ数をかけてもいい②分母分子に同じ数をかけてもいいを理解する
- 文字は単なる文字とみなすのではなく、具体的なものをイメージする
- 計算途中では因数分解の状態を保つ
- 分数・小数はすぐに消す
- よく出てくる式や変換を覚える
- 広いスペースに一定以上の大きさで書く
- 改行しイコールを揃えて縦に並べる
- 一行で一つの計算をする
一番大事なのは二つの原則①両辺に同じ数をかけてもいい②分母分子に同じ数をかけてもいいを理解するです。ぜひ実行してみてください。
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