古文の勉強法と教材ガイド
導入
先日世界史の勉強についてエントリーを書きました。お蔵入りしかけシリーズ第二弾、今回は古文についての記事を書き上げようと奮起しております。
世界史については思い出・結果ともに良好だったと書きましたが、実は受験の当時は私は古文が苦手でした。
得点が取れることもありましたが、結果があまり安定せず、試験でも苦しめられることも多くありました。何より、勉強があまり楽しめませんでした。
そうした自分の体験も踏まえつつ、文法も交えながら古典の学習全体のスタンダードを記したいと思います。
勉強法を二つに分けると、何をやるべきか(What)とどうやるべきか(How)になります。まずは What 何をやるべきか を明確にするところから始めましょう。
単語と古文常識
古文全体の学習内容は、「単語 + 古文常識/文法/読解練習」の三つに分けられます。この中で基礎にあたるのは前半の「単語 + 古文常識/文法」で、読解演習はそれらの総合としてあります。
単語
単語については、①今はない単語と、②今もあるが意味が違う単語を区別しつつ、単語の意味を一対一対応で正確に覚えることが大切です。
一対一対応とは、「をかし」⇄「趣深い」、「あてなり」⇄「高貴だ」のように、一つの単語につき一つの現代語訳を割り当てて覚えることです。単語帳を見ると、なかなか実感のつかめない訳語があてられていることもあるかと思います。そういうときは自分でアレンジしても構わないので、「この単語はこう」と自分の中でしっかり軸を持っておきましょう。
個人的なおすすめはこの単語帳です。情報量が多すぎず少なすぎず、実際の用例などが的確に載っている印象です。
去年まで緑の表紙でしたが、改訂して青いデザインになったようです。
Key&Point古文単語330―わかる・読める・解ける
他には桐原書店の『読んで見て覚える古文単語315』も良い単語帳だと思います。
単語帳は暗記のためのリストとしてだけではなく、読解練習をするときのコンパクトな辞書としての役割もあります。長文の項でも触れていますが、長文の練習時に、怪しい単語に出会ったら単語帳を引くことをおすすめします。
古文常識
語学系の科目として英語に比較できる古文ですが、単語と文法に加えて「古文常識」と呼ばれる当時の社会背景を知っておくことが必要です。代表的な例として、結婚をはじめとする男女の交際のスタイルや、貴族の生活習慣があげられます。
読解において状況や心情の理解に役立つだけでなく、単語の知識とも関係があります。当時は女性が滅多に人前に容姿を現さなかったこそ、「見る」や「会う」が結婚の意味になるといったような具合です。
当時の街の作りや文化、考え方などを知っておくことで、文章が読みやすくなるはずです。
文法
古典文法の内容
古文が苦手な人ほど、古典文法の勉強って何すればいいの?と思っているのではないでしょうか。
まず、古典文法を勉強する目的を確認しましょう。それは古文が読めるようになることです。入試問題は古文の読解が9割以上を占めています。どんな文章でも正確に読めるように文法をしっかり抑えます。
すこし脇道にそれますが、古文に限らず文を読むというのはアナログな行為で、読解=「単語 + 文法 + 古文常識」という単純な足し算には還元しきれません。知識は知識で必要ですが、それらを総動員して行う総合的な行為が読解です。
それでも、長い文がうまく読めないときには、あえて機械的に文法が取れるかをチェックするのが効果的です。原因が分からないのはフィーリングに頼りすぎなのかもしれないからです。
一度は文法を学んでいて、穴を埋めていく感覚で学習したいのであれば、次の問題集がおすすめです。良い点としては、問題が多すぎないこと、本番クラスの問題もあること、価格がお手頃なところ、があげられます。
ノートサイズで広げやすく、書き込みやすいのも特徴です。
基礎からのジャンプアップノート 古典文法
基礎をやり直したい、これから始める場合
基礎ができていない気がするのでしっかりやり直したいという人には、より親切で丁寧なこちらがおすすめです。
古典文法ドリル
始め方に迷ったら文法を
古典の学習を何から始めていいか分からなかったら、まずは文法をやり直しましょう。文法はまず大丈夫、と自信を持って言えるようになれば、あとは周辺知識(=古文常識)と読解の積み重ねでレベルアップしていくことができます。
注意点 文法の学習中は文法に集中しよう
文法の練習問題でも、「単語がわからない」ということがあるでしょう。そういう時はなるべく単語を調べてみるのがおすすめです。
例文に出てくる単語が分からない、知らない、ということがあっても、文法の理解に集中するようにしましょう。問題を解くときに、ヒントとして訳が載っている場合はどんどん見ましょう。訳が載っていない場合でも、「単語が分からなくて手が止まる」ならば辞書を引いてもOKです。
読解演習
文法がある程度整理できたら、実際に文を読みながら、テキストに文法の知識を当てはめていきましょう。
この段階では、項目ごとにバラバラに学んできた文法知識を、実際の文章に当てはめてるという感覚が大事です。係り結びをきちんと意識できるか?「べし」や「む」など多義的な助動詞の意味をきちんと感じられるか?などです。
もちろん、最初からできる必要はありませんが、文法知識と読解をつなげていこうとする感覚が大事です。
また、ひとつのまとまりのある古文のテキストを実際に読む、という実践に慣れていくことも重要です。文法練習のときは、非常に短く抜粋されたものしか読まないので、ある程度の長さをもつ、完結した内容の文章を読むには、前後関係や周辺知識など、知識を総動員して読む必要があります。そういった実践に少しずつ慣れていく段階です。
読解の練習
長文をやる際のコツととして、私がおすすめしたいのは、「練習と本番を分ける」ということです。多くの生徒が、長い文を読む際にいきなり問題を解いて玉砕し、自信を失っている印象があります。
強調したいのは、長文を読むときでも、テストとしてやる環境でなければ辞書を引きながら読もうということです。もしくは、実戦演習に入る前に、辞書を引きながらテキストを読む練習をする段階を経よう、ということです。
単語を覚えるのは長い時間が必要です。極端な言い方をすれば、単語帳に載っている単語など受験当日までに覚えればいいのであって、長文を読む練習をする際にそれらを全てマスターしている必要などどこにもありません(努力しなくていいと言っているのではありません)。
ところが多くの場合、長文を読むとなると生徒は無意識のうちに「単語も全てマスターしている状態でやるのが当然」と思っているように感じられます。
長い文というのはほぼ全ての場合選択式の問題とセットになっているし、そうでない長文は想像できないというのが実情なのではないかと思います。その意味で仕方のないこととも言えますが、これは上達を考えたとき非常に大きな障害になっていると思います。
話を戻して、要点として言いたいのは、辞書を引きつつ長いテキストを読む、長文の練習をする段階というのを意識して持とう、ということです。そうすることで、自分がどこを覚えていないのかも明確になります。問題を解くこと(そしてもっと言えば、とにかく正解すること)ばかりに気を取られていると、肝心なこの部分が分からなくなってしまいます。それは勉強の効果を半分以下にしてしまうことだと思います。
何度も繰り返しますが、辞書を引きながら文章を読む練習をしましょう。自分の力だけで問題を解くのは、その後もしくは少なくともそれとは別に行う。これが練習のポイントではないかと思います。
以下のテキストは、そのように辞書を引きながら読むことを奨励している点で、かなりおすすめです。参考書としての評価もかなり高いようです。
古文入門 読解と演習23
書籍タイトル | レベル | 難易度の目安 |
---|---|---|
『古文入門 読解と演習23』 | ★★☆☆☆ | 入試基礎〜センター |
『古文上達 読解と演習56』 | ★★★★☆ | GMARCH |
実戦
長い古文を読むことにある程度慣れてきたら、最後は実戦問題集で、実際の問題に対処できるかどうかを確かめましょう。この段階にきたら、分からない単語があってもなんとか文脈から想像したり、敬語や助動詞の識別を使って主語を補って文脈を特定したりと、色々なテクニックが身についていると思います。(これらに不安があるなら前のテキストに戻りましょう)
『河合 マーク式基礎問題集 古文』(センター)
『河合 入試精選問題集 古文』 (私大)
難易度:センター〜私大標準・難関
用途:解説を受けながらの演習がひととおり終わって、より本番に近い形で問題演習がしたい
河合 マーク式基礎問題集 古文
古文 (河合塾SERIES―入試精選問題集)
おすすめ参考書 『古文を楽しく読むために』
最後に、古文をもっと好きになりたい、あるいは、嫌いなので(嫌いだけど)好きになりたい、という人におすすめの本を紹介します。
古文を楽しく読むために
いわゆる学習参考書や問題集ではないので、これ一冊で受験に臨むためのものではありませんが、古文のエッセンスが詰まった一冊だと思います。比較的新しく書かれた本なので、従来の説明法のわかりにくかった点などを踏まえて説明されています。
また何より、古文が苦手な人のために、古文の面白さを伝えたいと思って書かれた著者の思いが伝わってくる本です。私がこの本に出会って古文って面白いなと思うようになったのは比較的最近のことですが、古文にもっと親しみたいとか、古文に面白みが感じられなくてきついと思っている人にまず読んでもらいたい本です。
通読しなくても面白みが感じられると思うので、気になった人はぜひ本屋で探してみてください。Tcialにも置いてあります。
私たちは、横浜にある小さな個別指導の学習塾です。
受験をはじめとした勉強において、固定的なカリキュラムや決まった勉強方法に生徒を適応させることに意識が向きがちです。
私たちはそれらを大切にすると同時に「生徒」を中心とした学習方法を提案し実践することが、生徒が勉強を楽しむことに繋がり、学力の向上につながると考えています。
「自分に合ったやり方で勉強したい」「どうせやるなら勉強を好きになってもらいたい」という方は是非ティーシャルをご検討ください。