【解説】2015神奈川県公立高校入試 数学-問4

神奈川県公立入試

こんにちは。数学を教えている深川です。
神奈川県公立高校入試の数学について気になる問題を解説しています。

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第5回目は問4です

ある年の7月に野球チーム A、B がそれぞれ試合を行った。
次の図は、A チームが行った全試合におけるそれぞれの得点の記録をヒストグラムに表したものである。

また、表は、B チームが行った全試合におけるそれぞれの得点の記録を度数分布表にまとめたものであり、B チームが行った全試合の得点の合計は108点である。

このとき、あとの問いに答えなさい。
ヒストグラム
度数分布表
(ア)図における中央値を求めなさい。

(イ)表の中の( i )、( ii )にあてはまる数を求めなさい。

(ウ)図、表から分かるものとして正しいものを次の 1 ~ 5 から2つ選び、その番号を書きなさい。

  1. A チームの試合数は B チームの試合数より多く、A チームの全試合の得点の合計は B チームの全試合の得点の合計より多い。
  2. A チームの得点の最頻値は A チームの得点の平均値と等しいが、B チームの得点の最頻値は B チームの得点の平均値と異なる。
  3. A チームの得点の範囲は B チームの得点の範囲より大きく、A チームが10点以上得点した試合数は B チームが10点以上得点した試合数より多い。
  4. A チームの得点の平均値は B チームの得点の平均値より大きく、A チームの得点の最頻値は B チームの得点の最頻値より小さい。
  5. A チームの得点は、A チームの試合の半数以上で、A チームの得点の平均値以上である。

大問4は、資料の整理の問題です。

これまでの神奈川県公立高校入試の問題では毎年確率の大問が用意されていましたが、傾向が変わりましたね。

資料の整理は統計学の入り口のような単元で、統計学は確率と密接な関係にあります。今後は確率と資料の整理のどちらかで大問一つが構成されるでしょう。

言葉の定義が大切

資料の整理には、統計学用語が登場します。それら一つ一つの言葉の定義を理解しておかないと、問題には答えられません。

簡単に定義を紹介しておくと、

平均値
観測した値の合計を、観測数で割った値。
中央値
観測した値を小さい順に並べたときの中央に位置する値。
最頻値
観測した中で最も頻繁に出現する値。

定義だけでは意味をイメージするのは難しいと思います。今回、A チームの試合の観測データは全部揃っているので、試しに A チームの得点の平均値、中央値、最頻値を求めてみましょう。

平均値、中央値、最頻値を求めてみる

まず平均値ですが、A チームの得点の合計を計算しなければなりません。

ヒストグラムの読み方ですが、一番左の赤く塗られた棒は0点を取った試合が2試合あったことを表しています。ヒストグラム2
得点の合計を計算するための式は、

0 × 2 + 1 × 2 + 2 × 3 + 3 × 4 + 4 × 5 + 5 × 3
+ 6 × 2 + 7 × 0 + 8 × 1 + 9 × 0 +10× 1 +11× 1

= 96

よって得点の合計は 96 です。

次に合計の試合数ですが、それを求めるための式は、

2 + 2 + 3 + 4 + 5 + 3 + 2 + 0 + 1 + 0 + 1 + 1 = 24

よって平均値は、96 / 24 = 4 です。

次に中央値ですが、1試合ごとの得点を小さい順に並べるとこのようになります。

0,0,1,12,2,2,3,3,3,3,4,4,4,4,4,5,5,5,6,6,8,10,11

試合数は24と偶数なので、
今回の中央値は小さい順に12番目13番目の平均を計算した値になります。

0,0,1,1,2,2,2,3,3,3,3,4,4,4,4,4,5,5,5,6,6,8,10,11

どちらも4なので、平均も4、つまり中央値は4です。

最後に最頻値です。もっとも多い回数登場した得点を判断するには、ヒストグラムで一番背の高い値を見ればわかります。ヒストグラム3
つまり最頻値は4ですね。

それぞれの用語を解説するためにそれぞれの値を計算しましたが、問題文を読んだ時点では求めなくてもよいと思います。もちろん求めておいてもよいですが、小問の内容によっては求めたことが活用されない可能性があり、時間のロスとなります。

それよりは度数分布表の中の( i )、( ii )は確実に小問で問われるでしょうから、
こちらも求めておきましょうか。

( i )、( ii )を求める

度数分布表
B チームについて分かっていることは度数分布表以外に、全試合の合計得点が108点だということです。

2得点した試合数と6得点した試合数はわからないので、
それ以外の合計得点を求めると、

0 × 1 + 1 × 0 + 2 × 0 + 3 × 4 + 4 × 2 + 5 × 2
+ 6 × 0 + 7 × 3 + 8 × 1 + 9 × 1 + 10 × 3
= 98

また表からは試合数の合計が20だと分かります。
( i )、( ii )以外の試合の合計は17なので、( i )+( ii )= 3 です。

合計得点と試合数から連立方程式を立てると以下のようになります。

・2 ×( i )+ 6 ×( ii )+ 98 = 108
・( i )+( ii )= 3

この連立方程式を解くと、( i )= 2 、( ii )= 1 という値が求まります。

それでは小問を考えていきましょう。

(ア)図における中央値を求めなさい。

図とはヒストグラムのこと、つまり A チームの中央値を問われています。
先ほど中央値は求めましたね。答えは 4 です。

(イ)表の中の( i )、( ii )にあてはまる数を求めなさい。

これも求めましたね。( i )= 2 、( ii )= 1 です。

(ウ)図、表から分かるものとして正しいものを次の 1 ~ 5 から2つ選び、その番号を書きなさい。

この問題は選択肢を一つ一つ検討していきたいと思います。

1. A チームの試合数は B チームの試合数より多く、A チームの全試合の得点の合計は B チームの全試合の得点の合計より多い。

まず「A チームの試合数は B チームの試合数より多く」の部分ですが、

A チームの試合数は24試合です。
B チームの試合数は20試合です。

よって、

A チームの試合数 > B チームの試合数

なので、この部分は正しいです。

次に「A チームの全試合の得点の合計は B チームの全試合の得点の合計より多い」の部分ですが、

A チームの全試合の得点の合計は A チームの得点の平均値を求めた時に登場していました。96ですね。

B チームの全試合の得点の合計は、問題文から108と分かります。

よって、

A チームの全試合の得点の合計 < B チームの全試合の得点の合計

なので、この部分は誤りです。よって選択肢1は誤りです。

2. A チームの得点の最頻値は A チームの得点の平均値と等しいが、B チームの得点の最頻値は B チームの得点の平均値と異なる。

まず「A チームの得点の最頻値は A チームの得点の平均値と等しい」の部分ですが、

A チームの得点の最頻値は既に求めています。4です。
A チームの得点の平均値も求めています。4です。

だから2つの値は等しく、この部分は正しいです。

次に「B チームの得点の最頻値は B チームの得点の平均値と異なる」の部分ですが、

B チームの得点の最頻値はいくつでしょうか?求めなければなりません。
度数分布表2
この表の中で度数が最も大きいのは4です。
3点を得点した試合数が一番多いということなので、最頻値は3です。

B チームの得点の平均値も求めるしかありません。
全試合の合計得点と試合数がわかっているので A の平均値を求めるより簡単です。

108 / 20 = 5.4

最頻値は 3、平均値は 5.4 なので異なります。

ということで、「B チームの得点の最頻値は B チームの得点の平均値と異なる」という部分も正しいです。

よって選択肢2は正しいです。

3. A チームの得点の範囲は B チームの得点の範囲より大きく、A チームが10点以上得点した試合数は B チームが10点以上得点した試合数より多い。

「A チームの得点の範囲は B チームの得点の範囲より大きく」の部分を確認します。

A チームの得点の範囲は 0 ~ 11 です。
B チームの得点の範囲は 0 ~ 10 です。

よって A チームの得点の範囲は B チームの得点の範囲より大きいので、この部分は正しいです。

「A チームが10点以上得点した試合数は B チームが10点以上得点した試合数より多い」の部分ですが、

A チームが10点以上得点した試合数は、10点得点した試合数は1、
11点得点した試合数は1よって、10点以上得点した試合数は2です。

B チームが10点以上得点した試合数は、10点得点した試合数は3で、10点より大きく得点した試合はないので、10点以上得点した試合数は3です。

よって A チームが10点以上得点した試合数は B チームが10点以上得点した試合数より少ないので、この部分は誤りです。よって選択肢3は誤りです。

4. A チームの得点の平均値は B チームの得点の平均値より大きく、A チームの得点の最頻値は B チームの得点の最頻値より小さい。

「A チームの得点の平均値は B チームの得点の平均値より大きく」の部分ですが、
A チームの得点の平均値は4、B チームの得点の平均値は5.4なので誤りです。

一部分でも誤りが文に含まれていればその選択肢は誤りなので、後半部分の確認は不要です。

さて。ここまでに正しい選択肢は2だけです。正しい選択肢は2つ存在するので、ここまでくればこの選択肢5も正しいはずですね。

でも解説ですし、選択肢5も確認しておきます。

5. A チームの得点は、A チームの試合の半数以上で、A チームの得点の平均値以上である。

改めてヒストグラムを見てみましょう。
ヒストグラム
A チームの半数の試合数は 24 / 2 = 12 試合です。

中央値は4点なので、半数以上は4点以上です。

この説明でピンと来ない人は、こちらを見てください。
0,0,1,12,2,2,3,3,3,3,4,4,4,4,4,5,5,5,6,6,8,10,11

後ろから数えて12番目までの数字に青く色を付けました。
これで12試合以上が4点以上得点したとわかりますね。

やはり選択肢5は正しいです。最終的な答えは 2 と 5 です。

資料の整理は、計算は単純ですが大変です。

ケアレスミスをしないで正解を導くための鍵は、
解くときも整理しながら進めることです。

今回の解説では式全体を記述していますし、
中央値を求める際などは1試合ごとの得点を並べました。

自分で解くときも少し大袈裟なぐらい丁寧に整理して進めるといいですね。

また沢山の値を求めることになるので数字の意味を見失わないようにしましょう。

例えば値を問題用紙の余白にメモするときは、

Bの平均値:5.4
Bの最頻値:3

という具合に書いていくと数字の意味を見失わないで済みます。

5.4
3

のように数字だけ書くと、書いてすぐのうちは頭で覚えているでしょうが、
時間が経つと意味を間違えてしまうかもしれません。

資料の整理は理解が簡単なので、冷静に解き進めれば確実に正解できるでしょう。

受験生の問題処理の正確さが試されているので、
ケアレスミスを防ぎやすい進め方を普段から身につけておきましょう。

以上、神奈川県公立高校入試の問4の解説でした。

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この記事を書いた人

深川 道陽

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